スーパースターからPSGのリーダーへ
「チームは今ものすごく良い状況にある。これを続けていくことが大切だ」
そう語る彼の傍らで、ボンっ、ボンっという音を響かせてボールをついていたのは、ネイマールの7歳の息子、ダヴィ・ルッカくんだ。
彼とエムバペのツーショット写真を、ネイマールはその日の朝、自身のインスタグラムに投稿していた。
「エムバペは息子のヒーローなんだ。将来は彼みたいな選手になりたい、なんて言ってるよ」
エムバペについてネイマールは、「彼を見ていると、19歳の頃の自分を思い出す」と語る。
「彼が成長するために力になれるなら、僕はなんだってやるつもりだ」
ネイマールはまた、この試合で正GKを務めたジャンルイジ・ブッフォンについても、「彼みたいな経験豊富な選手がチームにいることの影響は計り知れない」と話したが、報道陣の前に姿を現して、試合について、チーム状況について、仲間の選手について語る姿は、鳴り物入りで入団したスーパースターではなく、チームに対し責任を負うリーダーそのものだった。
この試合の前、エムバペもBeINスポーツとのインタビューで、「今季のPSGのリーダーはネイマールだ」という主旨のことを話していたが、それは新たに着任したトゥヘル監督の方針によるものだ。
トゥヘルとネイマールの関係はこの上なく良好で、指揮官から責任を与えられたネイマールはいま、『エースとしてPSGを頂点に引っ張ること』に意欲を燃やしている。
ガールフレンドをパリに呼びよせ、いつもの取り巻き連中とは少し距離を置いて夜遊びも自重するなど、ピッチ外の生活態度にも変化が見られると、レキップ紙も報じていた。
思いがけぬバッシングの嵐で不発に終わった初年度の昨シーズンを経て、パリでのネイマールのサッカー人生は、今季、ようやく本来あるべき形でスタートを切ったようだ。
(取材・文:小川由紀子【フランス】)
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