若手とベテランが真の意味で融合するには?
槙野智章も1~2年前に「選手の誕生日に何かをやろうと言い出すのはいつも僕。でも自分ももう30ですよ」と盛り上げ役としての悩みを口にしたことがあったが、若い選手が増えれば増えるほど、その傾向が加速しているようだ。その結果、日本代表全体の発信力が低下し、世間からの関心度も薄れていく。それは決していいことではないはずだ。
長友もこの問題を強く認識しているから、あえて若い選手に話しかけたり、メディアの前で「コミュニケーションの世界大会があったら優勝できるんじゃないかと思うくらい自信を持っている」と発言して笑いを取るなど、日本代表を盛り上げようと努力している。
長谷部や本田も発信力という点は卓越したものがあった。この2人の大ベテランがいなくなった今、その役割が長友に集中してしまっている。「みんなに刺激を与える部分ではパフォーマンスも必要」と本人も自覚を口にしたものの、30代になってアスリートとしてさらなる成長に挑みつつ、日本代表の地位向上や露出度アップにまで奔走するのは、いくら百戦錬磨の男にしても苦労が多すぎる。
彼らが若手だった10年前は、ベテランだった中村俊輔や中村憲剛に質問をしたり、意見を言ったりする姿がよく見られた。たとえメディアの前だろうが、遠慮する人間は少なかった。そのように年齢に関係なく選手たちがバチバチやり合うくらいの機運が生まれなければ、日本代表は本当に強い集団にはなれない。
森保ジャパンの滑り出しは今のところ順調だが、予期せぬ壁にぶつかった時に脆さを露呈する可能性も否定できない。次なる相手・ウルグアイはこれまで2戦とは比べ物にならないほど強い相手だからこそ、若い世代がピッチ内外でどんどん主張して、長友らベテランを動かすくらいの気概を見せるべきなのだ。
ウルグアイ戦ではコスタリカ戦で「ミラクル3」と称された堂安、南野、中島翔哉の若きアタッカー陣が揃ってスタメン出場すると目される。彼らには長友が求める強いコミュニケーション力や強力なパーソナリティを出す最大限の努力をすべきだ。一方で、長友らベテランは彼らの模範となるような働きをピッチ内外で示すことが求められてくる。新生日本代表に感じられる「長谷部&本田ロス」の空気を払拭するために、背番号5に託されるものは少なくない。
(取材・文:元川悦子)
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