代表チームが故にできやすい「穴」とは
そして森保監督が求めているビルドアップの部分。ショートパスを蹴る機会こそ少なく、ロングパスの方が目立った。「これは『繋ぐ』という狙いにマッチするのか?」という疑問が湧くかもしれないが、権田曰く「パスを通す」ことが「繋ぐ」に同義であり、そこにパスの長短は関係ない。
パナマ戦であれば日本の4バックに対して相手の選手が1人ずつ警戒心を働かせている中で、無理にショートパスを狙う必要はなく、相手の守備組織が前がかりになることによってできる背後のスペースに立った味方を狙う方が賢明だった。
「代表チームと言っても寄せ集めだから、みんなが自分のポジションの役割を守ろうとすれば守ろうとするほど、より出来やすい穴がある。(中略)所属クラブだったら普段からコミュニケーションをとって、『こいつはこれくらい守れるな』というのがあるけど、代表チームになるとそこが難しいので、今日はそこをうまく突けた。(中略)次の選手にしっかりポジティブなパスというか、次の選手が、次に出しやすいボールを自分から供給できるように、そういうのは好きなんで、今後もテーマを持ってやっていきたい」
例えば冨安がボールを前に運ぶことによって相手ディフェンスを引きつけるとできる、サイドバックの前方のスペースが、その「穴」の1つ。GKから1本の「ポジティブなパス」を通すことでも、センターバックあるいは青山を起点に組み立てても、相手の守備組織を動かせれば「穴」を作って、活用しながらボールとともに前進できる。パナマ代表のステンペル監督も「前半は14番(伊東)、15番(大迫)、9番(南野)のサイドでのプレーに手こずった。3番(室屋)も非常に良かった」とサイドで後手を踏んだことを認めていた。
2年7ヶ月ぶりの日本代表戦出場でも、ブレない「平常心」で冷静であり続けた権田は、3-0の快勝の裏で隠れた勝利のキーファクターだった。「僕らが目指すのは親善試合で勝つことではなくて、本当に完成されたチームが出てくる大会の中で勝つこと」と、さらに高い目標に向けて語る口ぶりにも力がこもる。
「僕はどんな舞台、これがワールドカップの決勝だとしても、自分が平常心でいつも通りのパフォーマンスを出したいし、それをやるために普段から常にどれだけ真摯にサッカーに取り組むかというのは、この3年くらいも変えずにずっとやってきたつもりなので、そこの部分はこれからサッカーをやり続ける限りはずっとテーマというか、自分の中で大事にしてやっていきたいなと思うの。代表戦で緊張してそうだったら、『どうしたんですか?』って聞いてもらえたら」
冒頭にも書いた通り、GKは常に最後方からピッチ上で起こっていることを俯瞰的に見ることができる。だからこそ冷静であればあるほど、チームにとって効果的な働きかけができる。勝利するとどうしても見逃されがちだが、その裏ではGKが地味ながら効果的な貢献を果たしていることを忘れてはならない。
(取材・文:舩木渉)
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