勝利のみが求められるからこそ、負けた時の傷は深い
「どんな状況でも、例えじゃんけんだろうと負けてはいけない」
静岡ダービーについて、ジュビロ磐田の名波浩監督はこう話したことがある。端的な言葉だが、清水エスパルスとの一戦の持つ意味はこれで説明がつく。それだけ勝利を強く意識するからこそ、負けた時の傷も深くなる。
明治安田生命J1リーグ第29節。アウェイに乗り込んだ磐田は、1-5と屈辱的なスコアでIAIスタジアム日本平を後にすることとなった。降格圏が迫る名波ジュビロにとって、今回の清水戦は最も重要なダービーだった。しかし、欲しかったものは手に入らなかった。
開始からわずか数十秒だった。不用意なボールロストからショートカウンターを受けると、清水のエースに成長した北川航也にゴールを奪われる。磐田は北川、ドウグラスの2トップに苦戦。38分にはドウグラスに裏を突かれると、個の力に屈する形で得点を許した。
リーグ戦4試合勝ちなしの磐田は、うち3試合で先制を許している。そして、この日も追いかける展開を強いられた。2失点を喫するまでに磐田は何度もセットプレーを獲得。その度に中村俊輔が質の高いボールを蹴ったものの、得点に繋げることはできなかった。また、流れの中からはフィニッシュに到達できず。サイドにパスをつけても手詰まりになり、相手ゴールを脅かすには至らない。