明らかな戦術との不一致を解決するには?
右サイドバックのダミアン・スアレスや左サイドバックのアントゥネスといった優秀なキッカーもおり、オープンプレーのクロスでも決定機を生む彼らの持ち味を、昨季以上に引き出せるかもしれない。
セルタ戦でヘタフェのゴールはサイドからの縦に速い展開から生まれた。マタにとって1部リーグでの初ゴールだった。ポストプレーでも存在感を発揮する新戦力はすでに2アシストも記録している。
やはりヘタフェはチーム全体としてもロングパスの比率が高く、毎試合パス全体の20%前後が最終ラインあるいはGKから前線への長い距離を一気に飛ばすパスになっている。各試合のスタッツを比較すると、中盤の選手よりセンターバックの選手のパス本数やタッチ回数が多くなっているケースも見られる。
センターバックはポジションを動かさず、全員で粘り強く相手の攻撃を跳ね返す。攻撃に移れば両サイドバックが高い位置を取って攻撃に絡みながら、相手の守備組織が整う前を狙って、一気にゴールを攻め落とす。これがヘタフェが得意とする戦い方で、7試合を終えて2勝3分2敗の9位とまずまずの順位につける。敗れたのもレアル・マドリー戦とアトレティコ・マドリー戦、いずれも強豪だった。
そんな中で柴崎は「戦術的な理由」でベンチにも入れなくなってきた。選手としての特徴を考慮すれば、現陣容ならセントラルMFの5番手、あるいは6番手といったところだろうか。今季開幕前に危惧されていた状況を変えることはできていない。
もし出番がない状態が続けば、日本代表入りにも影響が出てくる。1月のアジアカップまで残されたアピールのチャンスは10月と11月の2度しかないだけに、カウンター主体のヘタフェの中で何とか居場所を見つけ出したいところだ。
セントラルMFとして定位置争いに加わるのであれば、セットプレーのキッカーとして絶対的な信頼を勝ち取るか、守備面でアランバリやジェネ、マクシモビッチに匹敵する違いを見せることが、最も手っ取り早い手段だろうか。柴崎にとってハードなディフェンスは得意とする動きではないかもしれないが、この逆境は選手としての総合力を一段階上げるにはもってこいのチャンスと言えるかもしれない。
(文:舩木渉)
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