明確だった指揮官の補強方針
ロシアワールドカップで評価を高めた日本の司令塔が苦境に立たされている。柴崎岳は、ヘタフェで2試合連続ベンチ外となった。現地時間1日に行われたセルタ戦は「戦術的な理由」で遠征メンバーから外されたとスペインメディアは報じている。
チーム内で唯一のワールドカップ出場選手だった柴崎は、レアル・マドリーとの開幕戦に先発出場したものの、その後はラ・リーガ第4節のセビージャ戦に途中出場したのみ。ロシアの地で評価が高まったにもかかわらず、昨季に比べて明らかに出番が減っている。
とはいえ、出場機会激減は開幕前から十分に予想されていたことで、その理由もわかりやすい。昨季終盤の戦い方を踏襲したホセ・ボルダラス監督のチームでは、柴崎を「使う場所」がないのである。
昨季はバルセロナ、アトレティコ・マドリーに次ぐリーグ内で3番目に少ない33失点という堅守を誇ったヘタフェ。残留という目標を8位フィニッシュで悠々とクリアし、新シーズンに向けて取り組んだのは得点力向上だった。
トップ10の中で最も少なかった昨季の42得点に、堅守を維持しつつ、さらなる上乗せができれば欧州カップ戦出場圏内も夢ではないと考えたのかもしれない。そのための補強プランも明確で、今夏のヘタフェはクラブ史上最高記録を塗り替える約26億円を選手補強に投資した。
昨季の主力のうち退団したのは正守護神として堅守を支えたビセンテ・グアイタと、不慣れな中盤の底で奮闘していたモロッコ代表MFファイチャル・ファジルくらい。他はサブに甘んじていた選手たちを放出し、新たに主力候補となりうる戦力を積極的に獲得してパワーアップを遂げた。
特に前線の補強方針からは、ボルダラス監督がFWにどんな能力を求めているのかがわかりやすい。同時に昨季後半戦でセカンドトップ的に起用されることもあった柴崎が、今後そのポジションを務めることがないであろうことも見えてくる。
ヘタフェが今夏獲得したのは、ハイメ・マタとセルジ・グアルディオラの2人。前者が187cm、後者が185cmとともに長身で、パワフルなプレーを武器とする。レギュラーシーズンで33得点を挙げて2部の最多得点記録を塗り替えたマタは、30歳を目前に大ブレイクを果たした注目株だった。グアルディオラも昨季は2部で22得点と目立った成績を残している。