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Jリーグ 6年前

ウーゴ・ヴィエイラを奮い立たせた伊藤翔との絆。マリノスが掴んだ会心の勝ち点3、その要因

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「勝利とゴールを翔に捧げたい」

 ゴールを決めたら掲げるはずだったユニフォームは、試合前に自分のロッカーの前にかけていたもの。「試合前に『決めてよ』って話をしていたので、僕も強い気持ちでゴールを決めにいった。勝ち点3とゴールを(伊藤)翔に捧げたい」と、背番号7は語る。

 ポジションが同じで、1トップが基本のマリノスで同時に先発出場する機会はほぼない。ともにゴールの数で評価されがちなストライカーであり、バチバチのライバル関係でもおかしくない。だが、伊藤とウーゴ・ヴィエイラは互いをリスペクトし、固い絆を築いてきた。

 昨季は先発出場が減ると「何で出られないんだ」と不満を漏らすこともあった背番号7が、今季は伊藤の先発起用が続いても文句ひとつ言わなくなったことからも、2人がどれだけ互いをリスペクトしているかがわかる。

「僕が日本に来て、出会った時からなぜかわからないけどすごく仲が良いんだ。同じポジションなのに仲が良いのは不思議だけど、一緒に遊んだり、一緒にご飯を食べに行ったりする仲。調子の良い時にケガをしてしまったので、僕もすごく残念な気持ちになる。翔のためにゴールを決めた、という愛情表現で横断幕のところに走っていった」

 2人の絆の深さを物語るエピソードは仙台戦に限らない。今年7月の天皇杯3回戦、横浜FC戦では2人がPKキッカーをめぐって「じゃんけん」をしていたのを思い出した。「僕は打ちたくて、翔も打ちたくてああいう手段をとった。違う選手だったらじゃんけんもしていないと思う。すごく頼りになる人間だし、じゃんけんに負けて翔が蹴っていたら応援したかった」とウーゴ・ヴィエイラは伊藤への信頼を口にしていた。ライバルであり、親友でもある特別な関係だからこそ、仙台戦で自分が果たすべき責任の大きさを誰よりも理解していた。

 背番号7のポルトガル人FWが仙台戦にかける思いの強さは、ゴールだけに限らず、プレーの端々から感じられた。自身の1つ目のゴールにつながったGKへのプレッシングも「DFからパスが来るな、と先を読んでGKにプレスをかけた。ちょっとバウンドしたのでGKにやれることはなかった」と予測が光ったプレーだった。

 これ以外にも、時折無謀にも思えることもあったが、90分間を通じて仙台の最終ラインにプレッシャーをかけ続ける姿は、今までのウーゴ・ヴィエイラとは何かが違うように見えた。「勝ちたいという気持ち、負けず嫌いな気持ちが一番大事。もちろん戦術だったり、そういうものはいろいろあるけど、一番大事なのは勝利に対するハングリーさだと思う」と語る通りの貪欲さが、チーム全体に波及していくようだった。

 仲川の2つのゴールシーンでも、1点目の中央突破の際は右サイドに開きながら相手DFの注意を引き、2点目のヘディングシュートの際はゴール前で相手のマークを引きつけていたのがウーゴ・ヴィエイラだった。

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