ウーゴ・ヴィエイラが示した「WITH NO.16」
会心の勝利だった。29日に行われたJ1第28節、横浜F・マリノスは5-2というスコア以上に大きな意味を持つ勝ち点3を掴み取った。
ベガルタ仙台とはリーグ戦、YBCルヴァンカップ、天皇杯と通じて今季5度目の対戦。それぞれ状況が違い、結果や内容を一概に比較することはできないが、今回がマリノスにとって最も重要な一戦だったことは間違いない。
J1順位表の中盤から下に30ポイント前後のチームがひしめき、いわゆる“残留争い”は稀に見る大混戦。マリノスもその渦中にいる。苦しい展開を耐え抜いた前節のジュビロ磐田戦の勝利を無駄にせず、連勝が欲しかった。結果次第で一気に残留争いから抜け出せる、10月の国際Aマッチウィークによる中断前のホーム2連戦の重要性は誰もが理解していた。
仲川輝人は仙台戦の前日、「自分がゴールを決めたい気持ちもあるけど、今は内容よりも結果、勝利が欲しい」と言葉に力を込めていた。そして迎えた大一番で2ゴールを奪い、連勝に大きく貢献。有言実行を果たした。
もう1人、象徴的な活躍を披露したのはウーゴ・ヴィエイラだった。リーグ戦では4試合ぶりに先発出場を果たしたチーム内得点王のポルトガル人FWは、77分と86分にゴールを陥れ、エースストライカーとしてのプライドを示した。
「WITH NO.16」
磐田戦で左肘を骨折した「NO.16」を背負う伊藤翔の長期離脱が決まり、サポーターはゴール裏に「WITH NO.16」と大きく書かれた横断幕を掲げた。
77分、バックパスを処理しようとした仙台のGKシュミット・ダニエルに猛烈な勢いでプレスをかけてミスを誘い、ゴールを挙げたウーゴ・ヴィエイラは、その横断幕のもとへ一目散に駆けていった。
「本当は(伊藤の)ユニフォームを持ってパフォーマンスをしたかったんだけど、イエローカードが出るという話を聞いて…。いまは僕イエローカードを3枚もらっていて、出場停止にリーチがかかっているからね」
確かにベンチの脇ではスタッフと先にベンチに下がっていた大津祐樹が、伊藤のユニフォームを持ってウーゴ・ヴィエイラを大声で呼んでいた。そこではなく横断幕に駆け寄っていったのは、ただ忘れていたのではなく、感覚派ストライカーの冷静な判断だった。