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乾貴士が苦戦する2つの理由。6戦負けなしのベティス、“乾システム”をどう生かすか

text by 舩木渉 photo by Getty Images

“乾システム”でも本領発揮に至らない理由

 中盤ではリーグ戦全試合に先発出場しているベテランのアンドレス・グアルダードとセルヒオ・カナレスが不動の地位を築き上げた。前者は攻守のバランスを司る存在として複数の役割を高いレベルでこなし、後者は度重なる負傷を乗り越えてかつての輝きを取り戻し攻撃面でキャリア最高とも言えるパフォーマンスを維持している。

 前線はキケ・セティエン監督が昨季Bチームから引き上げてブレイクさせたロレン・モロンが中心で、ジローナ戦で今季初ゴールを挙げた。そこにセルヒオ・レオンやアントニオ・サナブリアといった実力者も控え、ハイレベルな競争が繰り広げられている。

 では、乾の居場所はどこにあるのだろうか。実はこれまで指揮官は乾を先発起用する場合とベンチスタートにする場合で、微妙にシステムを変えてきた。例えば0-3で敗れたレバンテとのリーグ開幕戦では乾を控えに置き、3-1-4-2でスタート。中盤のアンカーに夏の補強の目玉だったウィリアム・カルバーリョを据え、その前にグアルダードとカナレス、そして最前線にロレン、セカンドトップ的にリヤド・ブデブズを起用していた。

 一方、乾が先発出場して今季初勝利を挙げたラ・リーガ第3節のセビージャ戦では、ウィリアム・カルバーリョとグアルダードが中盤でコンビを組み、3-4-2-1が採用された。乾は左シャドーに入り、右シャドーのカナレスと最前線のロレンを支えた。

 その後、9月の代表ウィーク中にウィリアム・カルバーリョが負傷したため、アンカーを置く3-1-4-2はいったん封印。ここ最近のベティスは3-4-2-1をメインに戦ってきた。とはいえ“乾システム”とも言える布陣で、背番号8が本来の実力を100%発揮できているとは言い難い。

 その理由の1つは、前方にスペースが少ないことにある。ベティスは基本的にボールを保持して相手を押し込んだ状態でプレーする時間が長いため、必然的に相手守備ブロックはゴール前に圧縮される。エイバル時代は左サイドでボールを持ったら目の前の相手に1対1を仕掛けてスピードアップするためのスペースが開けていたが、人と人の距離が近くなるベティスの戦い方の中ではドリブルのスピードが上がりきらないのである。

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