重要視すべきは“守備の名手”
サッカーは個人スポーツではなくチームスポーツである。レッズ戦の神戸のようにチームメートたちが酷い守備をしているようでは、サッカー界屈指の偉大な選手の存在も結局はほとんど無意味となってしまう。
たとえイニエスタがピッチ上にいたところで、渡部博文のマークを難なく逃れた興梠慎三の42分の追加点を止める助けには全くならなかっただろう。高橋峻希が浦和の3点目に繋がるボールを武藤雄樹にプレゼントするのを止めることもできなかっただろう。
アンドレス・イニエスタを獲得するチャンスが訪れたなら、もちろん逃すべきものではない。だがJリーグクラブが大物選手を獲得しようとする時、守備的MFやセンターバックの獲得を試みようとはせず、いつも攻撃的な選手を選んでしまうのは残念なことだ。
ゴールを生み出す選手、ゴールを決める選手の方がはるかに魅力を感じさせる補強であることは確かだ。だがSNS上での話題性を高めることでなくタイトルを獲得することが最終的な目標なのであれば、相手の侵入を食い止める選手たちも同じくらい重要な存在となる。
本物のトップレベルの選手を迎え入れることのもうひとつの難しさは、そういう選手たちの扱い方をよく知らない可能性があるという部分だ。神戸はイニエスタとの契約からわずか4ヶ月で監督を交代し、吉田孝行監督に代わってフアン・マヌエル・リージョ監督が就任することになった。
新監督がより堅固で一貫した組織を導入し、イニエスタとルーカス・ポドルスキから最大限の力を引き出してくれることが期待されているはずだ。埼玉で90分間を戦い抜いたポドルスキも試合にインパクトを及ぼすことができず苦戦していた。
ポドルスキにできることは多くなかったと言っていいだろう。イニエスタが不在の状況で、元ドイツ代表FWは「何かを起こす」役割を強いられ、ボールを受けてゲームを組み立てるために信じられないほど低い位置まで下がらざるを得ないことも多かった。欧州でのキャリアを通してチャンスメークよりフィニッシュを担ってきた男にとっては厳しい注文だ。