状況が目まぐるしく変わる残留争い。名古屋に求められること
「ターゲットがジョーだけになると、どうしても狙われる。だからこそ僕や玉さん(玉田)が、ジョーの近くでうろちょろしないと。玉さんはいつも通りやっていましたけど、僕がジョーの背後を狙うシーンをもっと増やせば相手もバランスを崩して、ジョーのところが空いてくる。その意味では自分の動き出しの質もそうだし、運動量も少なかった。運動量が落ちると、動き直すことができないので」
チーム最多の10.841kmを走り、同2位の14回のスプリントをマークしても、勝てなければ意味がない。前節に続いて魔術師シャビエルを欠いた状況も言い訳にはしない。失点がかさむ原因を「攻撃陣がボールを失っているから。だからこそ、攻撃の質をもっと上げないと」と前田は続ける。
「ここから連敗すれば、またズルズル下がってしまう一方なので、次へ切り替えなくちゃいけない」
夏場まではともに降格圏にあえいだサガンとガンバが持ち直し、グランパスに変わって最下位に転落したV・ファーレンも連勝で食い下がる。結果としてV・ファーレンの「27」から勝ち点7ポイント差以内に、J1の半分となる9チームがひしめき合う未曽有の大混戦が生まれた。
勝ち点を「31」から伸ばせなかったグランパスは13位。下を見れば湘南ベルマーレに勝ち点で並ばれ、さらに1ポイント差でサガン、柏レイソル、ガンバが続く。上にはすべて勝ち点1ポイント差で12位に横浜F・マリノス、11位にジュビロ、そして10位には清水エスパルスがいる。
一節ごとに状況が目まぐるしく変わり、得失点差や総得点まで絡むことが必至の消耗戦はおそらく12月1日の最終節まで続く。台風で未消化の北海道コンサドーレ札幌戦を含めて残りは8試合。再び残留争いに巻き込まれ、対策も練られてくるグランパスに問われるのは難解な「風間イズム」を吸収しながら成長してきた跡と、それらをピッチ上で余すことなく発揮させるメンタルの強さとなる。
(取材・文:藤江直人)
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