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Jリーグ 6年前

名古屋・前田直輝は「ウルトラマン」。残留争いで放つ輝き、23歳が持つ底知れぬ潜在能力

text by 藤江直人 photo by Getty Images for DAZN

敗戦も輝きを放った前田

 20分に許した先制点はオウンゴール。MF大島僚太のクロスをヘディングでクリアしようとしたMF和泉竜司が、背後から迫ってきたMF家長昭博のプレッシャーを必要以上に意識した結果として体勢を崩し、自分たちのゴールに流し込んでしまった。

「相手というよりは自分自身に負けた。相手のプレッシャーにビビったというか、自信がないようなパスの回し方やプレーの選択になってしまった」

 前半でベンチへ下げられた和泉が、試合後の取材エリアで唇をかんだ。34分にはMF阿部浩之に鮮やかなミドルシュートを決められる。それでも、中村をして「ボールをもたせると上手くやられてしまった」と言わしめた場面が59分に訪れた。輝きを放ったのは前田だった。

 中盤で下がってきたジョーがボールを受ける。フロンターレのマークを引きつけたうえで、後方に生じたスペースへ侵入してきた左サイドバックの金井へ縦パスを入れる。金井をセンターバックの奈良竜樹がマークした分だけ、フロンターレの最終ラインにもギャップが生じる。

「(金井)貢史君が本当にいいボールをくれた。落ち着いて決められたと思います」
 奈良の背後へ走り込んだ前田が、金井のスルーパスにあうんのタイミングで反応。ワンタッチで利き足の左足を振り抜き、ゴール右隅へ鋭い一撃を突き刺した。昨シーズンまで2戦連続ゴールすら経験していない23歳が、3試合続けてゴールネットを揺らして反撃の狼煙をあげる。

 前田はわずか1分後には右サイドを抜け出し、角度のないところから右足を一閃。対角線を狙った強烈なシュートは、フロンターレの守護神チョン・ソンリョンが必死に伸ばした右足の先をかすめてコースを変えて、同点ゴールからコーナーキックへ変わった。

 再び2点差とされて迎えた83分には、自陣から発動されたカウンターに反応。縦へのスピードで奈良を抜き去った直後に、ペナルティーエリア外から強烈なミドルシュートを見舞うも、またもチョン・ソンリョンの美技に阻まれてしまった。

「後半はちょっと盛り返しましたけど、個々の差というか、僕を含めて決めるべきシュートを決められなかった。いつもはやれることを、特に前半はできなかった。川崎もそうだと思いますけど、相手から30センチでも離れればフリーになる、という状況は変わらないので。怖がることなく少しでも離れてボールをもらう、といったシーンをもっと増やしていかないといけない」

 チーム最多となる3本のシュートを放った一方で、8月以降で実に14ゴールを量産してきたジョーのシュートがわずか1本で終わった試合展開に、前田は自らを責めることを忘れなかった。

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