試合ごとに覚醒している
J1における未体験ゾーンへ次々と足を踏み入れつつある。J2の松本山雅FCから今夏に名古屋グランパスへ加入したMF前田直輝の現在地を表現すれば、右肩上がりの軌跡を描きながら試合ごとに覚醒している――となるだろう。
出場が可能となった7月22日のサンフレッチェ広島戦から、右ウイングもしくは右サイドハーフのポジションをゲット。10試合連続で先発を果たし、松本山雅時代の2015シーズンにマークした、自己最長の11試合連続先発出場をはっきりと視界にとらえた。
しかも、10試合のうち8度で、ピッチ上で試合終了を迎えている。横浜F・マリノスでプレーした昨シーズンまでの2年間を含めて、J1で先発フル出場を果たしたのは7回だったから、これまでの自分をすでに超えたことになる。
風間八宏監督のファーストチョイスになった理由は、絶好調をキープしているからに他ならない。10試合で6ゴールをマークし、シーズン最多だった昨年の4ゴールをすでに超えた。現在のペースが続けば、3年間のトータルとなる9ゴールを上回る可能性も十分にある。
何よりもゴール以外の部分で、グランパスに泥臭さをもたらした。10試合のうち総走行距離で6回、スプリント回数では7回にわたってチーム1位の数字を叩き出した。ハードワークの部分は松本で最初にプレーした3年前に、身長175cm体重66kgのやや華奢に映る体に搭載させたものだ。
小学生時代から東京ヴェルディでテクニックを磨いてきた前田は、トップチームに昇格して2年目の2014シーズンには19歳にして副キャプテンを務めた。ヴェルディから大きな期待を寄せられた一方で、いつしか「自分を変えたい」という危機感を抱き、期限付き移籍のオファーを受けた松本への加入を即決した。理由は反町康治監督が掲げる、妥協のない厳しい指導にあった。
「松本はスプリントの量が多いし、球際の強さもある。自分に一番足りないものであり、そこを強くしたいと思ったので」