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Jリーグ 6年前

神戸から香るリージョ・イズム。暫定体制で披露した「頭が疲れる」新戦術のエッセンス

text by 舩木渉 photo by Getty Images for DAZN

「身体が疲れるより、頭が疲れる」(郷家)

ファン・マヌエル・リージョ
ヴィッセル神戸のファン・マヌエル・リージョ新監督はビザの問題で直接指揮を執れないため浦和戦はスタンド観戦【写真:Getty Images】

 するとセビージャは後半開始から3バックの一角で、のちにバルセロナへと旅立つことになるクレマン・ラングレをさっさと下げ、ステバン・ヨヴェティッチを投入。3-4-3から4-4-2にシステムを変え、アトレティコの布陣との噛み合わせを修正した。結局試合には1-3で敗れるのだが、選手交代も含めてセビージャの戦術的な引き出しの多さは驚くべきものだった。

 これをサンパオリの裏で緻密に調整していたのが、これから神戸を率いることになるリージョだった。選手たちにピッチ全体をカバーする強力なプレッシングや、ハードワークを求める姿勢を植えつけるサンパオリと、複数のシステム、複数のポジションに対応できる戦術的柔軟性を身につけさせるリージョというコンビだったわけである。

 今回、浦和戦で暫定的に指揮を執った林監督は、ベンチで頻繁にアシスタントコーチのマルコス・ビベス氏に助言を求める姿が見られた。ビベス氏はイニエスタが日本に連れてきたスタッフの1人で、カタルーニャ州サッカー協会のテクニカルディレクターという要職を歴任した実績を持つ。

 この2人はともにリージョ体制でもスタッフ入りすることが発表されており、吉田前監督から引き継いだチームに、新たな挑戦につなげるための要素を注入した。ポドルスキは「新しいものに適応する時間がなかった」と悔やんだが、今後取り組んでいかなければいけないものはもっとたくさんある。

「身体が疲れるより、頭を使って頭が疲れる。止まってプレーする、相手が来てからボールを出す。そういうのを意識していました」

 郷家は新たなスタイルにおける「意識」の変化を、すでに実感していた。いくらボール保持率を上げても、ゴールを奪えなければ勝てない。ゴールを決めるためには、チャンスを作らなければいけないし、できるだけフリーでシュートを打てるチャンスを作るには、相手の陣形を崩さなければならない。

 ゴールから逆算してプレーを判断する際に、ただパスを横に回しているだけでは何も意味がない。ボールを動かすことで人も動かし、できるだけ相手の意図した陣形を崩した状態を作ることが、ゴールへ近づくための鍵になる。

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