「いまはトライアルができる段階だと思っています」
選手たちは体調などに合わせて生卵や牛乳、納豆などを自由に取れる。もちろん、ライスを山盛りでおかわりする選手も少なくない。田中さんが意図を説明する。
「選手によって体重も違いますので、一人当たりのタンパク質の必要量も変わってきます。なので、必要と思う選手は取ろうね、という形にしています。サッカー選手にとって一日3500キロカロリーは一般的な数値ではありますが、サプリメントなどが入ってきている関係で、実際には4000キロカロリーくらいになっていると思います」
東京・北区にあるトップレベル競技者用専用トレーニング施設「ナショナルトレーニングセンター」の栄養管理食堂業務を、開業時から委託されている「エームサービス株式会社」(本社・東京都港区、代表取締役社長・山村俊夫)が、今年に入って新たな給食会社として入っている。
献立メニューの組み立てやカロリー計算を含めて、1年目より2年目、2年目より3年目と変化させている点を田中さんはこう説明する。
「いまはトライアルができる段階だと思っています。いいところ、必要なところは残して、試せるところはどんどん変化させていきますし、それでダメならすぐに変える。その意味でも、スタッフや選手たちとのコミュニケーションが一番大事になってきますよね」
JFLへの昇格を争う11月の全国地域サッカーチャンピオンズリーグへ、いわゆる「飛び級」で出場できる条件となってきた「全社枠」の規定が今年から変更された。昨年までは毎秋に開催される全国社会人サッカー選手権で原則3位以内に入れば、全国地域サッカーチャンピオンズリーグへ出場できた。
一転して今年からは「地域サッカーリーグ(最上位リーグ)の2位、3位チームのなかから、全国社会人サッカー選手権のベスト4以上の上位3チームで、JFLへの入会を希望するチーム」となった。つまり、東北社会人サッカーリーグ2部南所属のいわきFCは、全国社会人サッカー選手権を勝ち抜いても、今シーズン中にJFL昇格を勝ち取る道を断たれてしまった。
Jクラブ勢と公式戦で対戦し、積み重ねてきた努力の跡を試せる舞台となる天皇杯全日本サッカー選手権も然り。J3の福島ユナイテッドを撃破して福島県代表こそ勝ち取ったものの、本大会では1回戦でJFLのソニー仙台(宮城県代表)に1‐2で逆転負けを喫してしまった。
勝てば2回戦でJ1王者・川崎フロンターレと対戦できた。春先から照準を定めてきた一戦は眼前で幻と消えてしまったが、新体制が船出した2016年1月から掲げられている、いわきFCのクラブスローガンは変わらない。
それは『WALK TO THE DREAM』――。試行錯誤を繰り返すなかで、日本サッカー界のなかで異彩を放つ日々の食事とトレーニングを介して筋骨隆々の体を作り上げながら、いわきFCは壮大な夢へ向かって確実に、一歩ずつ進んでいく。
(取材・文:藤江直人)
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