最後はやはりあの男が輝く
とはいえ、そんな彼らも集中力を切らす瞬間があった。そしてその間隙を突いて先制ゴールをねじ込み、試合の趨勢を変えたのは、やはりC・ロナウドだったのである。
81分、背番号7はゴール前中央にポジションを取った。一旦はオフサイドポジションにいて棒立ちになっていたが、それを見てとった相手DF陣は彼を視野から離す。こうしてフリーになった隙を見逃さず、オフサイドラインに掛からないよう調整を図ってゴール前のスペースを確保した。
するとそこに、ボールが流れてくるのである。左からピャニッチがシュートを放つと、マーカーの足に当たってゴール前中央にこぼれてきた。C・ロナウドから見れば、絶妙のタイミングでパスが入ってきたも同然である。瞬時に飛び出して反応し、利き足ではない左でワンタッチシュート。ゴール左隅へ、正確に流し込んだ。
それまで多くのシュートを放っていたが、スペースのないところから不正確に打たされたものばかり。しかしその中で、一瞬を捉える勝負強さはさすがである。
「C・ロナウドがいつも点を決めるのは、どういう展開になろうが常に試合の流れの中にいるからだ。昨季であれば(スコアレスのまま)延長戦に突入していたことだろう」
試合後、アッレグリ監督は地元メディアにこう語っていた。
そして、後半アディショナルタイムの追加点にもC・ロナウドが絡んでいた。セットプレーの守備に参加しながら、相手のパスミスを拾って一気にドリブルで直進。そこからピャニッチへと展開し、最終的にはベルナルデスキのゴールにつながった。
リードしていても90m近い距離のダッシュを厭わない実直な姿勢と、それを可能にする卓越したフィジカル。前節サッスオーロ戦の2点目もそうだったが、試合の終盤でこういうことをやりきる33歳の選手がどれだけいるのだろうか。
またも厳しい試合を乗り越え、ユーベは気がつけば開幕5連勝。その中にあってCR7の貢献は、目に見えてはっきりと分かるものになってきた。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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