勝ち点3以上の価値ある1勝
まずC・ロナウドが退場した後、アッレグリ監督はほかの選手に手をつけなかった一方、即座にシステムの変更を命じた。先発の4-3-3から4-4-1へ。引いて守ることになるのは仕方なく、その分後ろのスペースを効率的に消そうという意図の現れだった。
その策は機能した。バレンシアが攻めてくる中、中央とサイドのスペースは閉める。相手にボールは持たれても、ペナルティエリア内への侵入は絶対に許さない。バレンシアの攻撃陣は攻めあぐねた挙句、不正確なシュートをエリア外から打たされるばかりとなった。
一方、アッレグリ監督もただ守り倒そうとしたわけではない。右サイドにはフェデリコ・ベルナルデスキにジョアン・カンセロと、攻撃に持ち味のある選手たちを配し、カウンターを狙うための糸口を残す。彼らはその通りに機能し、バレンシアの流れを断った。相手のファウルを呼び込み、PKにつながるファウルを2度も獲得できたのは、そんな性質の攻撃によるものだった。
「サッカーになっていたのはうちが2点目を取るまでだった」と指揮官は語った。しかしその後のマネジメントも実に冴えていた。体が細く当たりが弱そうなミラレム・ピャニッチを下げて、ブレーズ・マテュイディを中央に寄せる。その分ドグラス・コスタを途中出場させて、あえて左MFで使ってカウンターも考えるという老獪さも見せた。
不利な戦局を戦術で補うというのはユーベの得意とするところだが、この試合にはもう1つの意味がある。今季から主力に定着しだした選手、あるいは新戦力が組織サッカーをこなしたということだ。ベルナルデスキが攻守のバランスの取れる選手へと成長していたり、カンセロが攻撃のみならず守備でもいい動きをしていたり、ジャンルイジ・ブッフォンから背番号1を引き継いだヴォイチェフ・シュチェスニーが好セーブを見せたり、チームの底上げは確かに確認できた。
CL優勝を目指すべく獲得したスターが、まさかの退場劇。アクシデントの中でユーベが手にしたのは、勝ち点3と新戦力を組み込んだ組織力への自信だった。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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