メッシを生かしつつ、生かされる動き
後半は、そうしたメッシの動き出しが見受けられる時間帯も少なくなったが、それでも2得点を叩き出した。いずれのゴールも、味方がボールを触る前に動き出したものであって、その手前まではやはり歩いていた。これこそ“緩急”というものなのであろう。効率的かつ確実にゴールへ向かっていける術を、メッシは知っているのだ。
バルセロナも、メッシのこうしたプレーを最大限に引き出そうと工夫はしている印象が伺えた。データサイト『Who Scored』による各選手の平均ポジションを見てみても、メッシは3トップの中では最も低い位置でプレーしていたことがわかる。これはメッシにある程度の自由が与えられていることを証明しているとみていいだろう。メッシは時にボランチの位置まで下がってくるし、時にはサイドを捨てて中央でプレーすることもある。ただ、それを可能にしているのが中盤の黒子役・ラキティッチであって、同選手のカバーリングや攻守のバランスを整える状況判断力がなければ、ここまでメッシの能力は引き出せなかったかもしれない。
また、周りの選手は背番号10を生かしながら自分たちも生かされようとしていた。クリスティアーノ・ロナウドに点を取らせようとボールを集めるユベントスのような形ではない。バルセロナにおけるメッシは点取り屋としてはもちろんのこと、アシストでゴールに貢献できるクリエイティブな選手でもあるのだ。だからこそ、スアレスやジョルディ・アルバといった選手はメッシにボールを預けつつ、自分たちも動きを止めない。それはもちろん、背番号10からのパスを受けるためのものだ。PSV戦の4点目、スアレスがメッシへフリックしたシーンを見ても、背番号10がゴールへ向かっている横で、パスを出したスアレスが全速力で駆け上がっていた。それはこぼれ球を狙ってのものだったかもしれない。しかし、リターンが来るかもしれないという期待を込めてのスプリントだったとも取れるだろう。