闘将が求める人材を的確に補強
2億2800万ユーロ(約300億円)。これは、昨夏の移籍市場でミランが投じた金額である。積極的な補強で数多くの実力者を揃えたため、ファンは大きな期待を抱いたはずだ。2017/18シーズンを皮切りにミランは名門復活への一途を辿るかに思われた。
しかし、最終的にはリーグ戦で6位に終わり、最大の目標であったチャンピオンズリーグ(CL)出場権をまた逃す形となった。シーズン途中で監督が交代するという事態はあったが、積極的な補強が成功だったか失敗だったかの2択で問われれば、誰もが口を揃えて失敗と言うだろう。それを証明するかのように、今夏、アンドレ・シウバ、二コラ・カリニッチ、レオナルド・ボヌッチらといった選手がわずか1年でクラブを去った。
だがミランは諦めていない。昨季の失敗を恐れず、今夏も1億2200万ユーロ(約158億円)を移籍市場で費やした。
最も大きな補強だったのは、ユベントスから獲得したゴンサロ・イグアインだろう。セリエAで5シーズン連続15得点以上を叩き出している生粋の点取り屋は、ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督が求めた「決定的な仕事ができるFW」という条件にピッタリとマッチしている。ミランの上位進出のカギを担う存在と言っても過言ではない。
また、DFラインには将来有望なマッティア・カルダーラがボヌッチとトレードという形でチームに加わった。アレッシオ・ロマニョーリとCBコンビを形成すると思われる。イタリア代表の未来を担うCBと称されるその能力に疑いはなく、得点力も高いため攻守においてその存在感の大きさを発揮できるはずだ。
中盤にはチェルシーからティエムエ・バカヨコ、手薄だったサイドアタッカーにはビジャレアルからサムエル・カスティジェホを補強。両者は控え要因となることが予想されるが、リーグ、カップ戦に加えヨーロッパリーグ(EL)を戦うミランにおいては貴重な人材だ。
フリーで獲得したイバン・ストリニッチが心臓の問題を抱え、シーズン序盤から起用できなくなったのは想定外だったが、ジェノアからディエゴ・ラクサールを獲得しそういった緊急事態を回避できた点は大きな評価に値する。ウルグアイ代表MFはSBはもちろん、3トップをベースとするミランにおいてはウィングの位置でも起用が可能だ。ロシアワールドカップでの活躍ぶりをみても、重要な戦力になることは間違いない。
ガットゥーゾ監督は今夏の移籍市場で「ストライカー、フランク・ケシエと似たタイプのMF、サイドハーフ」を求めていた。イグアイン、バカヨコ、カスティジェホがそれらに当てはまるため、おおむね良い補強だったと言えるだろう。