“フランス発”の魅力はフード系やモード系に
その理由として考えられるのは、日本人は、『本物感』とか、『らしさ』を求める志向が強いのではないかということだ。たとえばラグビーでは圧倒的に南半球、とりわけオールブラックスに代表されるニュージーランドが人気がある。
欧州でも、イングランドやフランスは代表チームも強いしリーグは隆盛で、とくにフランスのTOP14はラグビー界のプレミアリーグ的存在であり、いまや選手に払われるサラリーは世界で最も高く、オールブラックスのメンバーを筆頭に世界中のトッププレーヤーが参戦している。
しかし日本ではごく一部のファンの間でしか話題になっていない。日本代表メンバーを集めたサンウルブスがスーパーラグビーに参戦していることもあるが、多くの人が、ニュージーランドにラグビーの『本物感』を感じている。
サッカーでいうなら、90年代に世界を席巻したセリエAの『本物感』は、Jリーグ創世期の日本においても強烈な印象を放った。ロベルト・バッジョやジャンルカ・ビアリらが活躍したカルチョの世界は憧れの存在だった。
その後、98/99シーズンにトレブル(CL、プレミアリーグ、FAカップの三冠)を達成したマンチェスター・ユナイテッドに代表されるプレミアリーグや、メッシが登場したバルセロナと銀河系軍団レアル・マドリーがしのぎを削るリーガ・エスパニョーラの注目度がどんどん上がっていった。そこには、伝統にも裏付けられた「これぞ海外サッカーの醍醐味!」と人々が感じるものがあった。
そこへいくと、日本人がフランスに求める『本物感』『フランスらしいもの』といえば、たとえば有名ショコラティエやパティシエなどフード系や、モード系ではないだろうか。これらの世界なら「フランス発」とついただけで人々は興味をかき立てられる。
それでもフランス代表の7、8割がリーグ・アンに所属しながらワールドカップ優勝に絡むくらいになったら多くの日本のサッカーファンが「フランスのサッカーが見たいからリーグ・アンを見よう」という気持ちになるのかもしれないが、自国民すら他国に比べて熱狂的ではないリーグ・アンの現状を見る限り、それが実現するかは謎、するにしてもまだまだ相当時間がかかりそうだ。
(文:小川由紀子【フランス】)
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