若きエースを操るレ・ブルーの中枢機関
同じメンバーではあったが、この2試合での戦い方はW杯時とは違っていた。ロシアではひたすら『守って守ってカウンター』戦法だったが、この2試合では、レ・ブルーは、より動きも豊富なオープンゲームに挑んだ。
顕著だったのは、エムバペが以前に増して攻撃のエースとして明確な役割を担っていたことだ。グリーズマンはユーティリティー役に徹し、引きつけてはフィニッシャー役のエムバペにラストパスを送る、という意識を強く出していた。
彼自身も大会中の会見で、「彼(エムバペ)がどんな風にボールを欲しがるのか、僕の方でもっと理解できるよう努めている。なにしろ一緒にプレーできるチャンスは限られているからね。彼のビデオを見て、ポジショニングや動き方を研究して、もっともっと良い形で彼にボールを出せるようトライしている」と話していたが、この両戦でも、攻撃ラインから一歩下がった位置で、右に左にとテンポよくボールをさばき、時折ゴール前に危険なクロスを送りこむなど、緩急あるプレーで相手DFを揺さぶった。
やはりグリーズマンは、レ・ブルーの中枢機関だ。
そしてオリヴィエ・ジルーも、オランダ戦でフランスを勝利に導く決勝点を決めた。ジルーの代表でのゴールは、5月28日のアイルランドとのフレンドリーマッチ以来11試合ぶり。A代表通算32ゴール目で、31得点のジネディーヌ・ジダンを抜いて歴代4位にランクアップした。
エムバペやグリーズマンら、他の攻撃手を生かす彼の利他的で献身的なプレーは、デシャン監督も高く評価しているし、実際チームにとって貴重な働きをしていると思う。フランス代表でだけでなく、アーセナル時代も彼はそうだった。
そんなジルーに対する批評家やファンの評価は賛否両論だ。
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