体幹トレーニングで急成長した左足キック
天野本人も5月のガンバ大阪戦で今季2本目の直接フリーキックを決めた後、「キャンプでやったくらいで、それ以降はほとんどフリーキックの練習はしていないですけど、感覚がいいのもあるし、いま入っているので、特別やる必要はないのかなと思っています」と語っていた。
では、なぜJリーグ屈指の精度と評価され、実際に結果にも結びついているのか。理由はクラブでの全体練習とは別に個人で取り組んでいる「体幹トレーニング」の成果がある。長友佑都が師事したトレーナーの木場克己氏の指導も受け、左足の可動域を広げ、パワーを上げるためのトレーニングを積んできた。
日頃のチーム練習が終わった後にも、不安定な水の動きに対応しながら体幹を鍛える「ウォーターバッグ」を抱え、チューブを足首にかけて体幹トレーニングに勤しむ天野の姿を時折見かけた。日本代表合流後もチューブトレーニングを続けているという。
地道な鍛錬の成果はフリーキックのスタッツにも表れている。ゴール数が増えたのはもちろん、蹴り方、キックのバリエーション、コースにもこれまでとの違いが出てきた。昨年の公式戦でゴールを直接狙って蹴った16本と、今季の公式戦で同様に蹴った16本(9月10日時点)を比較すると、成長ぶりがよくわかる。
まず昨季蹴った16本のうち、相手選手が作った壁に当たったのが7本、壁を越えたもののゴールの枠外に飛んだものが6本あった。残りはクロスバー直撃が1本、ゴールの枠内に飛んでGKにキャッチされたものが1本、ゴールが1本である。
そして今季、壁に当ててしまったのは7本から2本に激減した。枠外は5本とさほど変わらないが、直接ゴールに決めた2本と、枠内に飛ばしたものが4本、さらにクロスバーあるいはゴールポスト直撃が3本となっている。
クロスバーやゴールポストに阻まれたものも含めれば、天野のフリーキックは実に「56%」もの確率でゴールの枠を捉えているのである。昨季が同様の条件で算出した確率が「19%」だったことを考えれば、大きな進歩であることに疑いはない。