この経験を今後にどう生かすか
伊東もハリルホジッチ時代にはワールドカップに手が届きそうなところまでいったが、西野朗監督に招集されることなく、ロシアの大舞台にはたどり着けなかった。その悔しさは彼自身の中にもあるはず。この日は右サイドでの縦への推進力が大いに目立っていただけに、森保ジャパンではこれまでと異なる印象を残すかもしれない。
2本目は22分間とやや短く、メンバーが少し入れ替わった。ビブスなし組はGKに東口、DFは遠藤、三浦、槙野、佐々木、ボランチに青山と守田、右MF伊東、左MF南野、FWに浅野と小林。ビブス組はGKにシュミット・ダニエル、DFが室屋、植田、冨安、車屋、ボランチに三竿と天野、右MFに中島、左MFは伊藤、 FWに堂安と杉本という構成。ただ、1本目に比べると全体の迫力が低下した。
ゴールも生まれなかったが、堂安、中島、伊藤という小柄なアタッカーが3人揃うと創造性が高まり、攻撃のバリエーションが広がることも明らかになった。加えて、ビブスなし組に入った佐々木と守田もまずの動きを披露。ここからのレギュラー争いに参戦しそうなムードを漂わせた。
もちろん本来行われるはずだったチリ戦に比べると、日本代表同士の紅白戦はやや物足りない部分もあるだろう。森保監督の思惑が外れたところもあったかもしれない。それでもまだ北海道全域で混乱が続く中、サッカーができる環境を与えられたことだけでも彼らは有難く感じている。
それは指揮官が選手たちに一番強調している点でもある。こういうアクシデントにチーム作りの頭から見舞われた日本代表チームは過去にないだけに、若い選手たちのタフさや忍耐力を養ううえでプラスになったはず。この経験は今後、確実に生きるはずだ。
8日も予定通りのフライトで大阪へ移動できることになった。それもチームにとっての僥倖だ。ここからコスタリカ戦に向けてどうチームを仕上げ、コンディションを高めていくのか。今こそ新生ジャパンの底力が問われる時だ。
(取材・文:元川悦子)
【了】