若手が台頭。セットプレーのスペシャリストも
試合の流れに応じて、伊藤と堂安という東京五輪世代をダブル投入するというのもトライしておきたい形だ。伊藤は「僕の場合のドリブルは1対1で抜き切る形。サイドは逆ですけど、どっちかというと伊東純也くんの方がたぶん近い」と自分の強みを説明していたが、とにかく局面打開力はシャドー候補の中でも飛び抜けて高い。それがドイツで3年以上戦い抜いてきた若武者の生命線なのだ。
その彼に比べると、堂安はテクニシャンの点取り屋というタイプ。昨年5月のU-20ワールドカップのグループリーグ最終戦・イタリア戦での4人抜きゴールに象徴される通り、リオネル・メッシを想起させるゴール前の鋭さがある。
本人は「U-20ワールドカップのゴールはイメージ通りではないですし、たまたますり抜けたという感覚がある。どちらかと言うと、オランダで見せた『相手をはがしてドン』ってパターンの方が自分の特徴だと思っている」と説明していたが、いずれにしても得点に関して多彩な形を持っているのは間違いない。その能力を最大限引き出せるパートナーが伊藤なのかどうかは分からないが、指揮官にはせひともトライしてほしい。
天野に関しては追加招集の立場ということもあって少し序列が下がるかもしれない。ただ、彼の中村俊輔を彷彿とさせる直接フリーキックの迫力は十分。最初に発表した23人にはセットプレーのスペシャリストが不在だっただけに、どこかで起用したい選手なのは確かだ。「森保さんとはチームでどのポジションをやっているかを話したんで、シャドーができるんじゃないかと思う」と本人も大激戦区で勝負する意思を示している。年齢的にはライバルの誰よりも上だけに、蓄積してきた経験値は高い。それをここぞというところで示すことができれば理想的だ。
森保監督の3-4-2-1システムにおいて2シャドーの仕事が生命線になるのは紛れもない事実。その大役を担うのは果たして誰なのか。今回招集していないロシアワールドカップでの主力だった香川真司や原口元気らも控えているだけに、若きタレントたちは持てる力の全てを出し切り、強烈な存在感を示すべきだ。鮮烈な印象を残す選手が1人でも多く出てくることを祈りたい。
(取材・文:元川悦子)
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