「兵役」を口にはしなかったが…
韓国代表はアジア競技大会に「どうしても勝ちたい」という気持ちで挑んでいた。この大会を通して、どのチームと比べても勝利への意志は韓国が圧倒的に上回っていたと言っても過言ではない。
ある意味、当然なことかもしれない。兵役免除。この単語の価値が日本の読者の皆様にどれほど伝わるか、少し心配だが、この特恵は紛れもなくたくさんのモノを選手たちに与える最高の宝物だった。兵役に費やさなければならない2年間が、サッカー選手として成長できる時間になる。一般人には考えられないご褒美だ。
もちろんこの単語を選手たちは露骨的に口にはしていない。国民の義務ということを知っているからだ。ちょっとした失言で国民の怒りを買う大きな災いに遭う可能性もある。
そして、兵役に行かなければならない2年間が大事、というのは選手本人たちも肝に銘じているはずだ。先輩たちが歩んできた道がどれほど厳しく、そして険しかったのか。
特にソン・フンミンやファン・ウィジョなど「入隊」が近づいてきた26歳の選手たちに漂っていた緊張感および危機感は並大抵のものではなかったはずだ。キャプテンマークを巻いたソン・フンミンはこの試合の結果でトッテナムでの立場や給与などを失うかもしれない。
こう言っても日本のファンには実感がわかないかもしれない。簡単に年俸で比べてみよう。徴兵制の韓国で、軍人に与えられる賃金は月2万円程度。ソン・フンミンがトッテナムで受け取る年俸が8億円以上だとすると、その価値の差がどれほど大きいかは、あえて言わなずともわかるはずだ。だからこそここで結果を残さなければならない。その大いなるプレッシャーを振り切った。グラウンドで人一倍の力を注ぎ、決勝まで上り詰めた彼らだ。なら、ゴールドメダルを首に飾るしかない。