大一番を前に「スマート」だったソン・フンミン
いよいよこの日がやってきた。約2週間半にわたって行われてきたアジア競技大会の最後の試合、決勝戦が1日に行われる。U-21日本代表と激突するのは、豪華なオーバーエイジ選手を揃えたU-23韓国代表。
そう、決勝は日韓戦である。お互いに金メダルだけを目指して辿り着いた場所。そして最大のライバルとの一戦。燃えないわけがない。
去る8月31日には両チームが共同で決勝前日の公式会見に臨んだ。出席したのは日本から森保一監督とキャプテンの三好康児、韓国からキム・ハクボム監督とキャプテンのソン・フンミンだった。
会見を終えて囲み取材に応じた森保監督に、ソン・フンミンの印象について問うと「スマートな感じでしたね」と笑顔で一言。この「スマート」は「賢い」という意味に違いない。ただ、韓国代表キャプテンが質問者が用いた言語に合わせて、韓国語と英語を適宜使い分けていたから…ということだけが「スマート」だったわけではない。
ソン・フンミンが会見の中で繰り返したのは「いい準備をしたい」ということ。ほぼ全ての質問に対して、必ずこの言葉が答えにくっついていた。
兵役免除がかかっていることを「プレミアリーグでのキャリアがかかっているのではないか?」と遠回しに尋ねられても「これまでの試合と比べても変わらない。明日の大きな戦いのために準備したい。いつも通りの準備をする」と答え、さらりとかわす。さすがに欧州の第一線で活躍する選手だけあって、時と場合に応じてどう振る舞うべきかしっかり心得ている。
会見の中で質問はやはりソン・フンミンに集中したが、彼の発言が必ずしも本心でないのはその場にいた誰もがわかっていること。もちろん内に秘める闘志と並々ならぬ覚悟も理解した上で。そこで「そんなこと思っていないだろ!」と異を唱える者はいない。公式記者会見とは得てしてそういうものだ。