新生日本代表の理想の姿とは
また、森保監督は「ユーティリティ性」についても「あまりにも極端な特長の違いはもちろん求められないですが、自分のポジションに関わるようなポジションは複数やってもらえるように」と自らの考えを話していた。
選手それぞれに得意なポジションがあり、ストロングポイントがあったうえで、「変化に対応する能力」としてのユーティリティ性を備えておく。ピッチ上のあらゆる状況に対応できる賢さも、A代表入りに必要な要素の1つになりそうだ。
ここまで見てきたように、ハリルホジッチ監督の時代に求められた球際での激しさや、より直線的にゴールへ向かう姿勢、西野監督が体現しようとしたボールポゼッションや器用さに溢れたサッカー、それらを全てこなせてこそ「森保ジャパン」にふさわしい選手になれる。
A代表入りには何でもできる万能戦士であることが必要なようにも聞こえるが、もちろん実際には選手個々のシュート、パス、ドリブル、クロス、ヘディングといった確たる武器も重要なのは間違いない。それらを発揮しながら、力が拮抗した相手、あるいは上回られた相手に対し、できるだけ多くのプレーの選択肢を用意して、状況に応じてピッチ上に反映させていけるかという能力こそが、森保監督の求める理想ではないだろうか。
現状では東京五輪世代と言われる20歳前後の選手たちが次々とA代表に入っていく状況は生まれないだろう。冨安、堂安、伊藤の初招集は「世代間の融合」の第一歩であり、彼らが日本代表定着を果たせなければ、次が続かない可能性もある。他の選手たちは成長速度をもっと上げていかなければ、日本代表という狭き門をくぐることはできない。
東京五輪代表の「A代表化」と日本代表の強化という2つの軸は、並行しながらも強く結びついている。森保監督を中心に進められる前例なき日本サッカーの未来作りは、決して簡単なミッションではないことを肝に銘じておかなければならない。
(取材・文:舩木渉)
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