「スターがいない中で彼らがどれだけやれるか」
[3-4-2-1]で臨むと考えると、攻撃に出て行けばウイングバックも高い位置をとって前線が5枚になるよね。一方、5枚で守って[5-4-1]になる時間が長くなるのは良くないかな。片方のウイングバックが戻ったら、もう片方は戻らない、最終ラインがスライドして4枚で守るのが理想だ。
オシムさんもよく言っていたんだよ。「5バックなんて聞いたことがない。なぜ5枚で守るんだ」と。攻撃の枚数が減ってもったいないということなんだよね。だから状況判断の中で帰らなくていいと思ったらそこまで下がらない。例えば左サイドが深く守ったら、右サイドは5バックにならず4.5くらいの位置にいて、そっちからカウンターを発動するとかね。守備から攻撃に切り替わった時のことを考えながら。最終ラインに吸収された状態から長い距離を走るんじゃなくて、少し高い位置からスッと出て行く。だから状況判断が大事なんだよね。
初戦の相手であるチリはスローペースがあって、急激なピッチアップがある。日本としては自分たちのストロングポイントを例えばカウンターで出すのか、ドリブラーがいっぱいいる時にどうやって崩すのかとか。適応能力が見たい。
それとやっぱり、スターがいない中で彼らがどれだけやれるか。スターになっていけるか。だけど、チームにもならなきゃいけない。自己犠牲しつつ、その中でも個々の持ち味を出していってほしい。そして、できれば勝ってほしいよね。
▽語り手:宮澤ミシェル
1963年7月14日、千葉県出身。Jリーグ黎明期をプレーヤーとして戦い、94年には日本代表に選出された経験を持つ。現役引退後は解説者の道を歩み、日本が出場した過去5大会のワールドカップを現地で解説している。様々なメディアで活躍。出演番組にはNHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』、WOWOW『スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』などがある。
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