輝きを放ったイ・スンウ
このハードすぎる勝ち上がりが、選手たちにとっては自信に繋がり、試合に臨むにあたってのメンタリティも変わりつつある。そして準決勝ベトナム戦は、イ・スンウという新たなヒーローが先輩たちを救った。
最初のゴールは7分。中央に進出したファン・ヒチャンがディフェンスを1人剥がして縦パスを送り、ペナルティエリア内でファン・ウィジョが反転しながら粘ると、イ・スンウが素早く反応してこぼれ球を回収して左足でシュート。韓国に貴重な先制点をもたらした。
28分には絶好調のファン・ウィジョが同じような形から追加点を奪う。イ・ジンヒュンからの縦パスをベトナムの最終ラインと中盤の間にできたスペースで受けたソン・フンミンが、反転して浮き球のスルーパスをペナルティエリア内へ。最後は巧みな駆け引きで裏に抜け出したファン・ウィジョがGKの飛び出しを見極めて冷静に今大会9ゴール目を決めた。
2点リードで優位に立った韓国は、後半の54分にも相手の緩慢な守備組織にできた穴を突いてゴールを陥れた。最終ラインの手前でパスをもらったイ・スンウがドリブルでゴールに向かって仕掛け、スルーパス。ボールをもらったファン・ヒチャンはディフェンスに阻まれたが、こぼれ球にイ・スンウが飛び込んで、2ゴール目。一気に3-0と突き放した。
ベトナムは今大会、準々決勝までの5試合で無失点だったが、その堅守を韓国はいとも簡単に壊して見せた。前線の個人能力の高さと言ってしまえばそれで終わりかもしれないが、ベトナムの5バックと3人の中盤の間に空くスペースを見逃さず、3ゴールともそこを起点に中央突破で崩していった。
決勝進出が絶望的な状況になったベトナムは、70分にトラン・ミン・ブオンの直接フリーキックで1点を返すが、韓国から最後まで主導権を奪えなかった。大量リードを手にした韓国は、ワールドカップも経験した3人のアタッカーや、GKチョ・ヒョヌらを中心に試合のペースを巧みにコントロールする。
試合を通じてベトナムのカウンターからピンチを作られる場面もあったが、強者らしい横綱相撲で時間を進めていく。決勝でもエースとして期待がかかるファン・ウィジョは59分でお役御免。ソン・フンミンも疲労を考慮してか、72分に交代となった。キャプテンマークを巻いた韓国の大エースはベンチに下がる際、スタンドの声援に勝ちを確信したかのようなガッツポーズで応えた。