「逆境でどれだけ普段通りにできるか」(森保監督)
もちろんミーティングなどで様々な働きかけをしてはいるだろうが、アジア大会期間中の森保監督は練習や試合をあえて静かに見守っていることが多い。選手に自立を促し、自発的なコミュニケーションやリーダーシップの発芽を待っているようにも見える。
UAE戦に向けて「みんなが『俺が中心になってやってやる』という思いを持ってやって欲しい」と語ったように、戦術や戦略だけで解決するのが難しくなってくる準決勝、決勝といった舞台に向けて、コンディショニングと同時にメンタリティの強化も欠かせなくなってくる。
「特に流れが悪い時とか、状況が悪い時にどれだけ普段通りのことをできるか。逆に普段見えないそのパワーを、逆境の時に見せてくれる選手がリーダーになっていく。周りからも信頼を勝ち得ることができると思う」
これは森保監督が「キャプテンに求める要素」を尋ねられた際に答えた際に、「一番大切なのは」と強調して述べた一節である。UAE戦でも必ず苦しい時間帯が訪れ、厳しい展開に持ち込まれ、難しい選択を迫られることもあるだろう。
そこでピッチ上で戦う選手たち、ベンチから出番を窺う選手たちが、どう振る舞い、何をチームにもたらせるか。選手それぞれの「リーダーシップ」が重なれば、困難な状況を打破するためのパワーを生み出す。森保監督は難しい条件が揃った大一番で、選手たちが殻を突き破ることを期待している。
「選手には東京五輪経由のカタールワールドカップとは思って欲しくないです。カタールワールドカップの日本代表、その予選を戦うA代表の選手が東京五輪で戦うということ、オーバーエイジも含めて考えて競争してもらえればなと思います。じゃないと、勝てない。メダルは獲れない」
森保監督がU-21代表とA代表の兼任になったことで両者は地続きになったようにも見えるが、かなりの急勾配を猛ダッシュで登らなければ、指揮官の求めるレベルに達することはできない。2年後に東京五輪に出場する選手たちには、同世代をリードする存在として、U-23代表の時点でA代表と同等かそれ以上の力を要求している。
つまり今、アジア大会に出場しているU-21日本代表の面々は、五輪出場の夢を叶えるために何枚もの壁を乗り越えていかなければならない。チームの誰もが口にする「金メダル」。アジアでの目標達成は、森保ジャパンとしての成長のみならず、選手個々のジャンプアップの大きなチャンス。まずはUAEに勝って、決勝への挑戦権を掴み取りたい。
(取材・文:舩木渉【インドネシア】)
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