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Jリーグ 6年前

久保建英に降りた“神様”。「急がば回れ」はいらない。自らの成長へ下した決断とプロの決意

text by 藤江直人 photo by Getty Images

結果を求めた中でのゴールに安堵も

 おそらくはレイソル戦が、移籍を決断させる最大のきっかけになったのではないだろうか。いま現在の自分に足りない部分のレベルを上げていく作業は、長期的な視野に立てばプラスになる。しかし、高く跳び上がるためにあえて低く屈む時期を、要は「急がば回れ」を久保はよしとしなかった。

 追い求めたのは短所を矯正するのではなく、ボールをもって前を向けば何ができる、自身のストロングポイントを徹底的に磨く道。ポステコグルー監督のもとでボールポゼッションを高め、パスをつなぐスタイルに転じた今シーズンのマリノスが、理想的な環境として久保の目に映ったのだろう。

「自分が新たな決断を下して、それで結果が出なかったら『何だ、やっぱりダメじゃん』と言われるのが明らかだったので。まず結果を出せて、自分もホッとしています」

 年齢に関係なく、プロならば誰でも決断に対する責任も負う。FC東京側の慰留を振り切る形でマリノスへ新天地を求めた久保が、将来に対して少なからずプレッシャーを感じていたことが、取材エリアで思わず漏らしたこの言葉からも伝わってくる。実際、久保はこんな言葉も紡いでいる。

「前半は1、2回くらいしかいい形で攻撃に絡めていなかったけど、ゴールを決めた後は何か体も軽くなって、元気が出てきました。こういう試合で結果を残せたのは、何かサッカーの神様がいるんじゃないかと思いました」

 ましてやマリノスは、熾烈なJ1残留争いに巻き込まれかけていた。ヴィッセル戦前までの6試合で1勝5敗と大きく黒星が先行していた苦境で、それでもポステコグルー監督はベガルタ仙台に屈した22日の天皇杯全日本サッカー選手権4回戦で及第点のプレーを見せた久保を先発で送り出した。

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