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Jリーグ 6年前

久保建英に降りた“神様”。「急がば回れ」はいらない。自らの成長へ下した決断とプロの決意

text by 藤江直人 photo by Getty Images

完璧に実践したシュートへのシナリオ

 取材エリアにおけるやり取りから察するに、おそらくは意図的に浮かせたのだろう。普通にトラップしていたら、体の向きを整える時間などにもうひと呼吸を要したはずだ。しかし、わずかながら浮いている間にシュート体勢に入ったことで、まさに「ワン・ツー」のリズムで左足を振り抜いた。

 だからこそ大崎のブロックも間に合わなかった。もっとも、久保は大崎が体を寄せてくることも見越しながら、シュートを放つに至るシナリオを完璧に実践してみせた。

「あの場面では相手が寄せてくると思ったので、トラップはできるだけ(体から)ずらさないようにしていました。相手がちょっと引いていたので、それに助けられました」

 ここで口にした「相手がちょっと引いていた」という言葉にも、久保の思考回路に搭載された非凡さが凝縮されている。ゴールシーンから20秒ほど巻き戻して再現すると、ピッチ上の状況の変化に応じながら、久保がゴールへのビジョンを小刻みにアップデートしていったことがわかる。

 MF山中亮輔が自陣のゴールライン際から、FWウェリントンのプレスをかいくぐりながらドリブルでボールを前へ運ぶ。自陣中央で山中からパスを受けたMF喜田拓也に対して、センターサークル内にいた久保が左手で小さくしながらパスを要求していた。

 喜田へプレッシャーをかけにいったDFアフメド・ヤセル、郷家、そしてMFアンドレス・イニエスタの間に生じたスペースで喜田から縦パスを受けた久保は、余裕をもった体勢から左足でボールにタッチ。右後方へと流し、自身も素早く反転して前を向くと、スピードに乗ったドリブルを開始する。

 次の瞬間、フリーの状態で右タッチライン際に張っていた松原から、パスを要求する大声が敵地のピッチに響いた。久保の耳にもはっきり届いた指示の意図を松原自身が明かす。

「前半からウチのインサイドハーフがボールをもったときに、サイドが空いていることがけっこうあって。ハーフタイムに映像を見たときにもそういうシーンを確認できたし、タケ(久保)なら左利きだし、僕のことを見えるだろうと思って、けっこう大きな声で呼びました」

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