クローズアップされるシュート直前のトラップ
ミスと焦りも手伝ってボールが浮いたのか。あるいは、意図的に浮かせたのか。出場7試合目にして初めて先発したJ1の舞台で、横浜F・マリノスのFW久保建英が決めた鮮やかなゴールをあらためて振り返ると、シュートを放つ直前のワンプレーがクローズアップされてくる。
ノエビアスタジアム神戸でヴィッセル神戸と対峙した、26日の明治安田生命J1リーグ第24節。両チームともに無得点で迎えた56分に、四半世紀を迎えたJリーグの歴史上で2番目の年少ゴールが生まれる。主役を演じたのは10日前に電撃的に加入したばかりの、17歳2ヵ月22日の久保だった。
クロスを放つ体勢から切り返したMF松原健が、右タッチライン際から中央へと侵入してくる。そして、挟み込みにきたDFティーラトンとFW郷家友太の間を縫うようにして横パスを送る。ターゲットはペナルティーエリアに入ったところにいた「15番」だった。
松原に正対する体勢で、久保が利き足の左足でトラップする。次の瞬間、ボールは50cmほど浮いている。そして、ボールが落ちてくる間に体を時計回りとは逆方向へ、4分の1ほど素早く回転させたときには、すでに左足を振り抜く体勢に入っていた。
FW伊藤翔をケアしていたDF大崎玲央が、必死に久保との間合いを詰めるも間に合わない。ボールの落ち際を的確にヒットするハーフボレーで、先のワールドカップ・ロシア大会に続き、9月の国際親善試合に臨む韓国代表に名前を連ねた守護神キム・スンギュの牙城を急襲した。
そして、身長187cm体重84kgのキムが必死に体を伸ばしながらダイブし、懸命に左手を伸ばしたときには強烈な弾道はすでに通過していた。コンパクトな振りから放たれた、右ポストの内側をかすめる一撃。久保は「コースは狙いました」と胸を張りながら、トラップに関しては言葉を濁している。
「覚えていないですね。それはご想像にお任せします」