劣悪なピッチにも柔軟に対応
もう一つバルセロナを苦しめたのが劣悪なピッチ状況である。ヌエボ・ホセ・ソリージャの芝は深く、ボールがあまり転がらない。そのためパスサッカーを基本とするバルセロナにとっては大きな障害だった。34分にコウチーニョがグラウンダーのシュートを放ったシーンを見てみても、コースは完璧だったがボールの威力が半減されてしまっていた印象を受ける。結果的にGKにセーブされゴールとはならなかったが、これがカンプ・ノウであれば決まっていたはずだ。
また、所々で芝生がめくれており、ボールが思わぬところで変化してしまう点も選手たちを苦しめた。これがバルセロナ対策として意図して行ったものかは定かではないが、本来のサッカーをさせてもらえなかったのは事実だ。
とはいえバルセロナもこうした状況を跳ね除けるだけの力は持っている。ショートパスがダメなら浮かせばいいと言わんばかりに相手DFの裏へ長いパスを送り、チャンスを生み出したのだ。
ただ何も考えず蹴っているわけではもちろんなく、味方の飛び出すタイミングや相手DFの位置を確認しながらパスを供給している。ジョルディ・アルバなどは、一瞬で動きを加速させパスを引き出すのがうまい。直前まで気配を消し、ここぞという場面で裏へ抜ける。こうした動きがバジャドリーのディフェンスに対しては唯一といっていいほど効果を発揮できるものとなっていた。
そして56分、ルイス・スアレスのロングフィードを受けたセルジ・ロベルトが頭で落とすと、ペナルティエリア内で待ち構えていたウスマンヌ・デンベレが右足で流し込んで先制点を生み出した。
このシーンではバジャドリーDF陣は左サイドのスアレスに意識が向いており、右サイドを駆け上がってきたS・ロベルトには誰も気づいていなかった。前半から果敢に狙っていた相手の背後を突く浮き球のパスはようやく功を奏したのである。