目標には一歩近づいたが…
「(0-1で敗れた20日の)ベトナム戦は入りのところで球際で相手に上回られて難しくなった。しかし今日の選手たちは最初から球際で激しくいき、タフにハードワークして、粘り強く戦って勝利したと思う」
7月末からA代表の指揮官も兼務し始めたU-21日本代表の森保一監督が努めて前向きに語ったように、24日のアジア競技大会決勝トーナメント1回戦、マレーシア戦(1-0で勝利)に挑んだ若き日本は前戦の反省を踏まえ、序盤から積極的な入りを見せた。
前田大然と岩崎悠人、旗手怜央の前線トリオが武器のスピードを前面に押し出し、背後を突く動きを披露。流れは悪くなかった。ただ、肝心の決定力を欠く。ボール保持率でもマレーシアを圧倒したものの、全体に各駅停車のパス回しが目立ち、攻めあぐねた印象も否めなかった。
前半を0-0で折り返すと、グループリーグで韓国を撃破したマレーシアが底力を発揮。鋭いカウンターを仕掛けてきた。相手のシュートがクロスバーやゴールポストに阻まれる幸運も重なって何とか無失点で踏みとどまったが、75分から85分にかけての日本の混乱ぶりは明らか。いつマレーシアに飲み込まれてもおかしくなかった。試合終了間際に松本泰志のスルーパスを受けた途中出場のFW上田綺世がPKを奪うと、それを自ら決め、辛くもベスと8入りの道をこじ開けたが、内容的にはとても満足できるものではなかった。
これで森保監督が大会前に掲げた「ベスト4以上」という目標に一歩近づいたのは確かだが、「A代表に昇格させられる選手を探す」というもう1つのテーマを考えると、収穫は乏しかったと言わざるを得ない。
各ポジション毎に見ていくと、まずGKの小島亨介と、原輝綺、立田悠悟、板倉滉の3バックは最後のところで体を張り、相手を無得点に抑えたものの、安定感に欠ける場面が見て取れた。前線3人の速さを生かすようなフィードも少なく、「もう少しパス回しのテンポを上げたら相手も苦しくなったと思う」とA代表に最も近いところにいると言われる板倉も反省の弁を口にしていた。彼ら長身DF陣が「自分たちはやれるんだ」という気概と迫力を見せてくれれば、他のポジションよりA代表への昇格は早いはずだが、このマレーシア戦を見る限りではまだまだ物足りなく映った。