足元を見られたGKの交渉
少しだけ気の毒なスタートだった──。
現場の意見が反映されなかったり、監督と主力が対立したり、近ごろのチェルシーは人事がギクシャクしている。この夏もアントニオ・コンテ前監督と上層部が、契約解除金をめぐってお互いの立場を譲らなかった。当然、2018-19シーズンのチーム創りで後れをとる。
マウリツィオ・サッリ新監督は、ナポリから獲得したジョルジーニョのほかに、ゴンサロ・イグアインとダニエレ・ルガーニ(ともにユベントス)の補強も目論んでいたが、交渉のテーブルにすらつけなかったようだ。イグアインが「積極的だったのはサッリだけ」と語り、ルガーニのエージェントも「金額の提示があったにすぎない」と、チェルシー内部の温度差を感じさせる発言だ。
また、ティボー・クルトワの移籍に伴う交渉でも機動力を欠き、レアル・マドリーとの交渉が成立したのは、プレミアリーグの市場が閉鎖される8日前。後釜の確保に時間がなくなり、アスレティック・ビルバオのケパ・アリサバラガを獲得するため、契約解除金の7200万ポンド(約103億円)を支払う羽目に陥っている。
ビルドアップ能力ではクルトワを上まわるGKとはいえ、総合力でマンチェスター・ユナイテッドのダビド・デ・ヘア、マンチェスター・シティのエデルソン、リバプールのアリソン・ベッカーに迫るようなレベルではない。チェルシーはA・ビルバオに足もとを見られたのだ。
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