名波ジュビロの核になれる存在
昨年から練習試合でキャプテンマークを巻くことがあった上原は今季、副主将に就任している。名波監督をはじめクラブの期待を背負う21歳は磐田の下部組織出身であり、後輩たちの目標となる存在だ。去年11月のある日には、こんなことを語っていた。
「ジュビロでずっと育ってきたし、他のチームを見たことがないというのもあるけど、ジュビロがすごく好き。このチームでタイトルを獲っていきたいし、中心でありたいなというのはすごく思う」
この年の夏以降に頭角を現すと、ラスト4試合はいずれもピッチに立った。「3週間、常にいいパフォーマンスでいないとやっぱり使えない。俺は、紅白戦で一度良かったからといってすぐに使う性格じゃないから」と指揮官は話していた。つまり、背番号30は指揮官を納得させて権利を勝ち取ったということだ。そのプロセスが上原に自信を与え、向上心はさらに強くなった。
「今年レギュラーを取りたいし、頭から出て活躍したらもっともっと成長すると思う。チーム内の競争は激しいけど、少しの時間であっても出場したらアピールしていかないといけない」
途中出場となった今季開幕戦の後にそう話していた若者は、次第に序列を上げていき、今や不可欠な選手の一人となった。ウズベキスタン代表のムサエフが長期離脱中で、川辺は3年間の期限付き移籍期間を終えて広島に戻った。
とはいえ、日本代表経験のある田口が新たに加わり、柏戦がそうだったように山田もボランチでプレー可能。宮崎や山本という実力者もいる。競争の激しさは変わっておらず、主力の座は安泰ではない。実際、ベンチスタートの試合もあり、完全なレギュラーと呼ぶにはまだ早い。
それでも、名波ジュビロの核になれるだけの力を上原は備えている。3試合ぶりの勝利を果たした柏戦の後、彼はチーム全体について語った。その様子に、磐田の中心として戦う覚悟が感じられた。
(取材・文:青木務)
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