大久保嘉人によって変わった上原のプレー
磐田に来る前と同様、Jリーグ最強のストライカーはチームメイトにパスを要求する。出し手が躊躇しそうな状況でも、大久保にはゴールへの道筋が見えているのだろう。その感覚のすり合わせは簡単ではないが、研ぎ澄まされていけば相手に脅威を与えられる。例えば逆転勝利を掴んだ第20節・ベガルタ仙台戦の前半終盤、上原が大久保に縦パスをつける場面が2度あった。ゴールにこそ繋がらなかったが、何かが起こるのではないかと期待させるには十分だった。
「嘉人さんの要求に応えていけばもっと、イチ選手としての幅が広がったり成長に繋がる。その要求は高いですけど応えていきたいなと思います。自分の中でもテンポが変わっているし、まだまだ合わないシーンが何回かありましたけど、やっていけばどんどん合うと思うので続けていきたい」
希代の点取り屋のスタイルに触れたことで、上原は自身のプレーに変化を感じているようだ。大久保は柏戦で移籍後初ゴールを記録。出し手とのタイミングが合えば得点数はさらに増えていくはずだが、その大久保を躍動させられるようになれば、上原の前には新しい景色が広がることになる。
昨季は中村俊輔が加入し、“世界”を間近で感じる環境を手にした。また、上原にとっては川辺駿の存在も大きかった。名波監督はボランチの選手にも果敢な攻撃参加を求めるが、川辺は3列目からの飛び出しで多くのチャンスを作った。パスセンスが光る上原は、サンフレッチェ広島に戻った1つ年上の親友の特徴を見て学び、共に戦うことで吸収してきた。
そして、大久保という圧倒的な実績と実力を誇るストライカーも、上原が覚醒していく上で重要な存在となるのではないだろうか。
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