食いつかせてパスで剥がす。それを平然と続けていた
16分、イニエスタは中盤でボールを持つと、相手を引きつけておいて味方とのワンツーで打開。人を捕まえに来る湘南の選手の動きを利用する形でフリーになり、持ち運んでスルーパスを供給した。
また66分には、郷家友太からパスを受けるとイニエスタは三田に預ける。三田が縦につけ、長沢の落としをもらったイニエスタは左足ダイレクトで右のスペースへパス。ルーカス・ポドルスキが中に持ち込んで左足シュートを放った。
郷家から受けた時、イニエスタは1つタメてから三田に出している。このタメによって対峙する相手と入れ替わることに成功。長沢の落としを受けた時にはフリーの状態で、前向きに次の選択に移ることができた。
さらに70分にも、三田とのパス交換でイニエスタが前を向いた。自分のところで失わなければ味方がプレーしやすい状況になることをわかっている。だが、それを平然と続けることができるのがイニエスタのイニエスタたる所以なのだろう。
相手を食いつかせておいて剥がす、というプレーをイニエスタは前半から多用していた。湘南のアプローチも鋭いが、神戸の背番号8は相変わらず無駄のない動きで簡単に入れ替わった。そこでボールを失えば一転してピンチになるが、剥がせれば一気にチャンスとなる。ギリギリの駆け引きをイニエスタは行っている。
試合前にスカウティングの結果は伝えられているはずだが、実際に対峙してみてわかることもあるだろう。イニエスタは前半の早い段階で相手の特徴を把握していた印象だ。
イニエスタはこの日、相手のブロックの前でプレーする時間が長かった。自らフィニッシュに持ち込むような場面はなくとも、チームが攻撃を完結できるよう操った。先制点の場面でも相手はイニエスタの前に人を並べ、長沢にもマークがついていた。それでも、少しでも時間を得ると、長沢の高さや三田が抜け目なく走りこんでくるであろうことを計算してあの球種を選択した。