新加入FWが色濃く受ける薫陶
前半戦のJ2で11ゴールをあげる活躍が認められ、今夏にFC岐阜から完全移籍で加入した23歳の古橋が合流したのは今月3日。一時帰国中で不在だったイニエスタとは、練習でもほんのわずかしか一緒にプレーしていない。それでも、薫陶をすでに色濃く受けている。
「紅白戦などで『もっとよさを出していいよ』と言ってもらっていたので。僕のよさは前へ飛び出していくことだし、実際に前へ動くとすごいパスが出てくる。自分のよさはこれなんだと再認識して、ポジティブな姿勢で臨めました」
縦へ抜け出すスピード、そして高速ドリブルを武器とする古橋のポジションは左ウイング。後方の左インサイドハーフで攻撃を差配するイニエスタにとって、身長170cm体重63kgのボディに無限の可能性を秘めた、いまがまさに伸び盛りの古橋は頼もしい相棒に映ったのだろう。
実際、前半だけでも25分、42分とゴール前への飛び出しからチャンスを迎えた。そして56分に待望の瞬間が訪れる。右コーナーキックのクリアをイニエスタが左へはたき、戻ってきたDF大崎玲央が宙を舞った体勢から、中央のウェリントンへパスを送った直後だった。
ウェリントンは右足のヒールによるワンタッチで、左側へいた古橋へパスを落とす。意表を突かれたジュビロ守備陣はまったく反応できない。あうんのタイミングで抜け出し、カミンスキーの動きを冷静に見極めて右足を一閃。出場2試合目にして、夢にまで見たJ1初ゴールを決めた。
そのままゴール裏のスタンド前へダッシュし、サポーターへ向けて名刺代わりの咆哮を届けた古橋は、試合後の取材エリアで表情を引き締めていた。69分にもイニエスタのスルーパスに飛び出しながら、カミンスキーの必死のセーブにあってシュートを弾き返されていたからだ。
「僕がしっかり決めていれば、あと2、3点は入っていたので。ああいうところをしっかり決め切る力をつけないとこの先はやっていけないというか、このチャンスをものにできないと思う。いままでテレビで見てきた2人と一緒にプレーできることは誰もが望んでいると思いますし、そのチャンスを得られたいまはどんどん吸収して、いいところを学んで今後につなげていきたいですね」