周囲も心を打たれる謙虚な姿勢
イニエスタがあえて藤田を呼び止めたのは、2日間の練習と密接に関係していたはずだ。イニエスタが入った場合はシステムを[4‐4‐2]から[4‐3‐3]にスイッチ。いずれのシステムでもボランチとして、中盤における攻守のバランスを司っていたのが藤田だった。
ヴィッセルの攻撃を差配していくうえで、前線の攻撃陣だけでなく、後方のボランチとコミュニケーションを築く作業は急務となる。チーム関係者を通じて藤田のニックネームと経歴を調べた姿勢に、デビューを前にした話し合いを円滑に進めていきたい、というイニエスタの配慮が伝わってくる。
いまでは試合中にアイコンタクトと、あとは簡単な英語を介してコミュニケーションを取り合っていると、藤田は笑顔を浮かべながら明かしてくれた。
「自分がアンドレスを動かすのであれば、どちらのコースを切るのかを『ライトかレフトという単語でいいから言ってくれ』と言われています。彼自身も守備にいくときは周りを見て、状況を判断しながらいってくれるなかで、たとえば僕が『ライト』と言えば右を消しながらいってくれるし、無理だと思って『ストップ』と言えば止まってくれる。もっともっといい関係を築いていきたいですね」
どれだけずば抜けたテクニックと戦術眼をもっていても、たった一人ではサッカーはできない。新しいチームメイトたちの性格を含めたすべてを一刻も早く知りたいと、自ら積極的な立ち居振る舞いを見せるイニエスタの謙虚な姿に周囲も心を打たれたのだろう。
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