なぜ、自分のニックネームを知っているのか?
FCバルセロナとスペイン代表で一時代を築いた稀代のプレーメイカー、アンドレス・イニエスタの「すごさ」を最初に体験した日本人はヴィッセル神戸のチームメイト、藤田直之かもしれない。
デビューへの期待が高まっていた、7月22日の湘南ベルマーレ戦へ備えて前泊していた神戸市内のホテル。夕食会場へ向かっていた藤田は、おもむろに「ナオ」とニックネームで呼び止められた。振り返ってみると、日本中の注目を集めていたイニエスタが笑顔で立っていた。
微笑ましい光景ではあるが、ちょっとした疑問も残る。イニエスタが来日したのが同18日で、全体練習に初めて参加したのが20日。言葉も文化も風習もすべてが異なる新天地に合流してから、ほとんど時間が経っていない。なのに、自分のニックネームを知っているのはなぜなのか。
お互いに片言の英語を介してコミュニケーションを取っているうちに、藤田はさらに驚かされた。2015シーズンまでサガン鳥栖に所属していたことを、イニエスタが知っていたからだ。
「自分の経歴を知ってくれているだけでなく、みんなの名前を覚えようとしていた。試合中も含めて、自分はいまも『ナオ』と呼ばれています。本当にすごいな、と思いましたよね」
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