韓国を導く真のヒーローは…
これはキム・ハクボム監督が指導した成果でもあった。以前までファン・ウィジョは身体能力こそアジア人離れしているものの、守備との駆け引きなどで少し伸び悩んでいた。そんな彼をキム・ハクボム監督は信頼し続け、チームのメインストライカーとして出場機会をたっぷりと与えた。その信頼が結果として現れたのが2015年のことだ。その経験があったからこそファン・ウィジョが成長できたのは間違いない。
この師弟関係を”コネ”と呼ぶには無理がある。2人には深い結びつきがあるとはいえ、ファン・ウィジョが残した今季のJリーグでの成績は誰しもが認めるもの。FWの得点力のなさが指摘されていたG大阪だが、ファン・ウィジョは20試合で9ゴールを奪った。チーム得点の半分近くを彼が決めている。Jリーグで彼より調子のいいFWはサンフレッチェ広島のパトリックくらい。特に得意とする右足のシュートの精密さは、時間が経てば経つほど鋭さが増した。現在の調子の良さは誰も否定できない。
そしてその調子の良さがアジア大会初戦で思う存分発揮された。ソン・フンミンやイ・スンウが出場しない中で身軽な動きを披露し相手を圧倒。地元のファンからは拍手喝采が送られている。大体の韓国メディアは「ファン・ウィジョがこのゴールでコネ疑惑を払拭した」と報道した。キム・ハクボム監督も「私はコネ疑惑について全く考えてなかった」とし、「実力と現在の調子をしっかりと検討した上で彼を先発させた」と語っている。
ファンを納得させるほどの結果は出した。しかしファン・ウィジョは興奮していない。彼はバーレーン戦が終わった後、淡々と「まだ1試合が終わっただけ」と述べ、「自分の役目は選手たちを引っ張ること。これをしっかりと果たしたい」と成熟した姿勢を披露した。疑惑や非難の声を払拭し、さらには落ち着きの溢れる姿でファンからのブーイングを沈めた彼が、韓国にとって真のヒーローかもしれない。
(文:キム・ドンヒョン)
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