年俸は懸念材料ではなかったが…
そもそも、金銭面はオーストラリアサッカー連盟(FFA)が「ゲスト・マーキー」(編注:FFAが獲得資金を肩代わりしてサラリーキャップの枠外で契約する選手)でOKという姿勢で交渉を始めた時点で、充分にクリアになっていたから難題にはなり得ない。
単年で390万豪ドル(約3億1000万円)という契約は、32歳とベテランの域に達した本田の市場価値を考えて相場的にも妥当。むしろ、お手頃感すらある。そもそも副業やスポンサー収入などで潤沢な資金力を持つ本田とその周辺にとっては、よほどの開きさえなければ、年棒の額面が懸念材料ではなかったことは想像に難くない。
筆者は「無理難題」を以下のように推測していた。1つ目は「ビジネス・コミットメント」。最近の本田は「ビジネス」への湧き出る興味や熱い思いを隠さない。むしろ、「ビジネスマン・本田圭佑」がかなり強く押し出されてきた印象だ。
彼がウィル・スミスと組んで設立したスタートアップ支援のファンドなどは、見る人が見れば驚くような顔ぶれが揃い、そのプロジェクトに対する彼の本気度が透けて見えるほどだと聞いた。おそらく、ここが彼の今後のキャリアの肝となる部分だからこそ、そういったコミットメントが、メルボルン・ビクトリーでのプレーヤーとしてのコミットメントと重複した際に調整の必要があることも出てくる。だから、そういったことを、ある程度事前に契約に落とし込んでいるのではと考えたのだ。
もう1つは、バハマで自ら明かした選手としての直近の大目標たる「東京五輪」を目指す中でのスケジュール面。ここにも問題が潜んでいる。日本のA代表と東京五輪を目指すU-21代表を兼任する森保一監督は、すでにA代表のレギュラークラスのオーバーエイジ枠への立候補を歓迎する意向を見せている。