必然のゴールが生まれるまで。後手の対応を強いられた磐田

　最後の局面でイニエスタにパスが渡った瞬間、磐田は“ほぼ無力”の状態だった。磐田の左サイドでポドルスキがボールを持った時、大井健太郎はウェリントンの位置を気にしていた。前回対戦ではこのブラジル人FWに得点を許しており、警戒を緩めるわけにはいかなかった。

　だが、ポドルスキがゴール方向へ斜めに運んだ時、大井と高橋祥平の間が開いてしまう。イニエスタは、ボールサイドへ移動した宮崎智彦と最終ラインの前まで降りてきた田口泰士の間をランニングしながら、大井と高橋の間のスペースへと加速。ポドルスキには上原力也がマークするも外され、宮崎もアプローチに行ったが間に合わない。

　そして、ポドルスキのパスを受けたイニエスタは、ウェリントンへのパスを警戒したと言う大井を美しいターンでかわし、リーグ最高の守護神であるカミンスキーが守るゴールを冷静に破った。磐田は昨季のJ1最少失点クラブだが、その立役者2人をイニエスタは無力化した。

「エリア内に、ウェリントンの奥にももう一人いた」と大井は振り返ったように、古橋も逆サイドから侵入してきていた。大井と櫻内渚は数的不利の状態での対応を強いられている。それでも、背番号3は「大外を捨ててスライドができていれば、もうちょっとうまいこと対応できたと思う」と述べ、「あそこまで入られてしまった守備に問題があったかなと」と続けた。

　イニエスタとポドルスキの間にワールドクラスのホットラインが存在したのは間違いないが、磐田は一連の流れでことごとく後手を踏まされた。元スペイン代表に“世界”を見せつけられる前に食い止めたかったが、イニエスタがボックス内でパスを受けた時点で、スコアが動くのは必然だった。