兵役は韓国サッカー全体が抱える大きな問題
この兵役の問題は一個人のキャリアだけにとどまらない。ある意味、韓国サッカー界全体が抱える問題でもある。一部のエリートのみを育てる風土から脱し、サッカー界全体の底上げをしていこうとする韓国サッカー界にも兵役は大きな損害だ。
兵役によって全盛期にレベルの高い欧州のトップリーグでプレーするチャンスを失ってしまう。トップレベルでなくとも、ベルギーやクロアチアなどのリーグにすら移籍することも難しいため、欧州の屈強な選手たちとの対戦機会を得られない。
これは選手にとってはもちろん、韓国サッカー全体のベースを引き上げるチャンスを失ってしまうのと同じだ。世界レベルから遠ざかってしまうという懸念があるのも無理ではない。優れた選手がどんどん欧州に移籍にしていける日本とは環境が全く違い、今は大きな影響が出ないとしても、10年後には日韓の実力格差が広がってしまう可能性も高い。
もちろん欧州にいる選手たちが復帰することで国内リーグの活性化を考えられるかもしれない。しかし、ソン・フンミンがもしKリーグの軍隊チームに入隊するとしても、喜ぶべきことではない。リーグの振興には大きな影響を及ぼすかもしれないが、韓国のエースがトップレベルでバリバリ活躍する姿を見られないのはファンにとっても大きな損失だ。リーグの競争力を向上させるチャンスも同時になくしてしまう。
兵役の障壁をクリアする明確な策がないのもより大きな問題だ。ワールドカップの結果に対して「兵役免除」の特恵を与えることは、サッカー以外の種目の反対にる直面する。軍隊のプロチームを増やすことも考えにくい。兵役とうまく付き合いながらしのいでいくしかないのが現状だ。選手の欧州への移籍が活発になればなるほど、韓国サッカーの苦悩も深刻になっていく。
(取材・文:キム・ドンヒョン【韓国】)
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