神戸が得た2つの収穫
アンドレス・イニエスタは2試合続けて欠場。いない選手のことを嘆いても仕方ないが、イニエスタがいれば、という試合ではあった。三田、藤田、増山、郷家友太などボールの扱いに長けた選手たちを擁してはいる。だが、絶対にボールを失わず繋げてくれるという信頼においてイニエスタは別格だろう。
彼がピッチに立った試合では距離感が保たれ、ボールは意思を持ったように動く。安易に味方に近づかないという点も、元スペイン代表MFの優れた能力のひとつではないか。
特に前半は人がボールに集まりすぎたため最前線のウェリントンが孤立。サポートがない状況でポストプレーを強いられ、森重真人、チャン・ヒョンスの相手CBに潰された。
神戸は得点を奪うためにボールを保持しているが、それが手段ではなく目的になってしまっていた。対するFC東京は目的が明確で、奪ったボールをそのまま攻撃に繋げるのが上手く、各々のプレー選択も的確だった。前半は互いにシュート数が伸びなかったものの、ホームチームのほうが迫力があった。
そこで後半、吉田監督は勝負に出る。スターとから2枚代えを決断し、渡邉千真と古橋亨梧を投入した。この交代に伴いシステムも[4-3-3]から[4-4-2]にシフト。「変化を加えなければいけない」と指揮官は振り返ったが、実際にチームには推進力が生まれ、ボールも前を向くようになった。
時間の経過と共に試合はオープンな展開となり、カウンターを打ち合った。最後はFC東京が決め、神戸は勝ち点を取れずにスタジアムを去ることになったが、戦いに変化をつけられたのはポジティブな要素だろう。
そしてもうひとつの収穫は、新加入アタッカーが可能性を示したことだ。FC岐阜からこの夏に加わった古橋は、前へのプレーを何度も選択し、積極的な姿勢で可能性を感じさせた。