データから見えた「堅いサッカー」への弱さ
負けた試合はすべてボール支配率が「60%」を超えており、ある程度「自分たちのサッカーができた」と言えるだろう。だが、最終的には相手により多くのゴールを奪われている。この8試合のうち最新の広島戦を除く7試合を分析すると、ボールロストの場所が極端に偏っていることがわかる。
ピッチを3つに分割し、相手ゴールに近い「アタッキングサード」、中央の「ミドルサード」、自陣ゴールに近い「ディフェンシブサード」とすると、負け試合の場合ボールロストのうち50.3%が「アタッキングサード」なのである。
反対に勝利した5試合では、「アタッキングサード」でのボールロストは36.8%、「ミドルサード」で28%、「ディフェンシブサード」で35.2%と、均等に分布している。ボール支配率でも相手に40%以上を握られたのが5試合中4試合、中でも鹿島戦は唯一50%を切った。
皮肉な話だが、「自分たちのサッカー」をできていない方が「勝利」という結果が出ているのである。勝利までいかずとも、例えばJ1第6節の川崎フロンターレ戦は前半相手に押し込まれ続け、ほとんど何もさせてもらえなかったところから引き分けに持ち込むことができた。
ボールを常に握って相手を押し込んでサッカーをできている試合の方が結果がともなわない。飯倉は「広島のような相手を倒していかなければいけないというのは、次へのステップだと思う」と語ったが、まさに「堅いサッカー」をしてくるチームに対しての戦い方を見直すべきだろう。
マリノスはどうしても相手陣内でボールを支配する時間が長くなるため、カウンターを受けやすい。それは空中戦の傾向にも表れており、負けた試合ではセンターバックの中澤佑二が1試合平均5.6回、ミロシュ・デゲネク(すでに退団)が平均7.3回の競り合いを強いられていた。一方で勝った試合では、空中戦の競り合いが、中澤は1試合平均4.4回、デゲネクは平均5.6回に減る。
自陣でボールを奪ってから、前線に素早く展開してくる相手の攻撃の狙いをいかに封じるかが守備の生命線だが、現状はファーストディフェンス、セカンドディフェンスを簡単に外されて、ゴール前までやすやすと運ばれてしまう状況が頻発している。