再びアクセルを踏んだ広島
原点に立ち返ることが、サンフレッチェ広島にとって一つのテーマだった。そして、やるべきことを実践した上で完勝と言える結果を得た。ここからさらにギアが上がっていきそうな気配が彼らには漂っている。
ボールを握ることが前提の相手と戦えば、ボールを握りたいが最優先ではないというチームがポゼッションで劣勢に回るのは仕方ないだろう。ただ、ロシアワールドカップでも見られたように、後者が力を発揮することもままある。広島は自分たちの進化の可能性を諦めていないが、今できることを疎かにもしない。
明治安田生命J1リーグが再開してから横浜F・マリノス戦までの3試合、広島は1勝1分1敗という成績だった。直近2試合を見れば1分1敗で、前節はホームで浦和レッズに1-4と粉砕されている。破竹の勢いで首位を快走していた広島もペースダウンするのか――。そう思われてもおかしくない状況だったが、城福浩監督率いるチームはあっという間に本来の姿を取り戻した。
暑さが残る夜のニッパツ三ツ沢球技場で、広島は開始からプレスをかけ続ける。ボールを奪ってもすぐ取り返される場面はあったが、一方でマイボールにしてから素早く縦につけることでチャンスも作っていた。23分には中盤で稲垣祥が奪い、青山敏弘が間髪入れずに裏へ浮き球のパスを送ると、パトリックが抜け出しポスト直撃のシュートを放っている。『量』をこなすことで『質』が追いついてくる印象だった。
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