「守備への意識」がG大阪逆襲の羅針盤に
「この1年半、ツネさんと一緒にやらせてもらって、自分をよくするためにさまざまなアドバイスももらってきました。だからこそ、恩返しがしたいという思いでプレーしていました」
フル出場したアントラーズ戦をこう振り返った高だが、今シーズンは同期の高江や食野亮太郎、後輩の福田湧矢や中村敬斗がJ1でデビューする姿を見送ってきた。もちろん、悔しくないはずがない。
「この半年間は自分自身との戦いでした。(メンタル的に)きつい思いを本当に何回もしてきたので、チャンスをくれたツネさんを勝たせたかった。勝ち切れなかったのは、やはり課題ですね」
アントラーズ戦のキックオフを直前に控えたときに、宮本監督は高にこう耳打ちしている。「これまでの悔しさを、しっかりとここで出してこい」と。タイミング的にも絶妙だったことは、高が実はほとんど緊張することなく試合へ入っていった軌跡が如実に物語っている。
初陣はそのまま引き分けに終わった。連敗は2で止めたが、勝ち星なしは6試合連続に伸びた。順位も16位で変わらず、残留圏の15位・柏レイソルとの勝ち点差も4ポイントに開いた。苦境には変わりないが、優れたモチベーターとしての一面ものぞかせた宮本監督は努めて前を向いた。
「戦術的な落とし込みをする時間が少ないのは事実ですけれども、そこは上手くやりながら、相手によって選手起用も考えていきたい。ただ、チームとしてしっかりとした守備が必要だとは選手にも伝えています。前節まで25失点していたなかでそこは減らしたいので、引き続き求めていきたい」
来月のアジア競技大会に出場する韓国代表に招集された関係で、断トツの8得点でガンバの攻撃陣をけん引するFWファン・ウィジョが、第21節以降最大で5試合欠場する。ただでさえ過酷な夏場の消耗戦がさらに厳しさを増すなかで、高や米倉を介して伝えられた宮本監督のイズム、つまりは「守備への意識」が、ガンバが逆襲に転じていくうえでの羅針盤となる。
(取材・文:藤江直人)
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